西武・中村、連日アーチも変わらぬ平常心 「やはり勝たないと面白くない」

西武・中村剛也【写真:荒川祐史】

前半戦は打撃不振も、後半戦から徐々に復調

■西武 7-4 日本ハム(5日・メットライフ)

 パ・リーグ首位攻防第3ラウンド。前日同様、首位の西武が1-4と劣勢で迎えた2回裏。優勝を知る主砲・中村剛也が同点3ランで試合を振り出しに戻すと、5回には外崎修太から3ランが飛び出し、逆転勝利を飾った。

 試合後、指揮官が賞賛した「7番」中村剛也の14号3ランが試合の流れを変えた。中村自身は、初球をとらえた一振りを「入ってくれたのでなんでもいい」と振り返ったが、「外崎の時、結構コントロール苦しんでいたので、甘いところを狙ってフルスイングしました」と、日本ハム先発・高梨裕稔の状態を観察した上での一発だった。

 お立ち台で「前半戦は全然打てなかったので、後半戦もっと打てるように頑張ります」と語ったように、前半戦は試合にこそ出場したものの、打撃で結果を残すことができない日々が続いた。

 打撃不振の中村に追い打ちをかけたのが、三塁守備での左肩の負傷。2月のキャンプ時には「そこにいてくれるだけでいい」と辻監督も評価していた守備での怪我で、4月22日に1軍登録を抹消された。抹消までの打撃成績は55打数8安打。そして本塁打はなんと0。打撃不振は数字にはっきり表れていた。

 怪我の治療が明け、再登録されたのは6月1日。負傷した左肩の様子を見ながら、徐々に試合出場を増やしていく中、6月9日の巨人戦で待望の今季初アーチを放つと、6月27日のオリックス戦で約1年ぶりの1試合2発の「おかわり弾」を放った。

下位打線の配置も辻監督「そこに置いているだけ」

「ちょっとずつ良くなってきている」と復活の気配を感じ取っていた指揮官は、7月以降すべての試合で中村をスタメン起用する。そして、8月5日までの打撃成績は88打数26安打、打率.295。本塁打11本で長打率は.704。復活を信じて使い続けた結果が数字となって現れた。

 この日の同点弾を「勇気の出るホームランだったね」と称賛した辻監督は、中村の状態について「他の打席もボール球を見極めながら、タイミングよく振っている」と分析。中村自身も試合後「だいぶよくなっている」と語るなど、自らの調子に手応えを感じているようだ。

 首位攻防戦勝ち越しを決め、優勝への意識は高まるが、「んー、どうなんですかね。今の位置、一番上にいるので、しっかり戦っていければ。守るんじゃなく挑む気持ちで戦っていけば、結果は後からついてくる。気にしないでやればいい」と、優勝を経験している男は、自然体での戦いこそ優勝への近道と語る。さらに、「やはり勝たないと面白くない。今年は優勝できる位置にいるので、プレッシャーもあると思うけど、そういうことを感じながら試合ができていることは、野球選手としてすごくいいこと」と、優勝争いの渦中にいる充実感を語った。

 元本塁打王を下位打線に配置する辻監督は、「そこに置いているだけ。本来ならそんなバッターじゃない」と話す。一方で中村は、自らの状態に手応えは感じつつも「そういうのは気にせず、1打席1打席」と平常心。連夜の一発に浮かれることなく、いつものように淡々と次の試合を見据えていた。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

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