【JFEスチール東北支社下期展望】〈前村和宏支社長に聞く〉需要建築中心に引き続き好調 省力化・短工期化に寄与

――今年上期を振り返っての印象を分野別に。

 「土木は震災復興案件が想定通り減少したものの、昨年発生した災害の復旧も含めて減災・防災関連が動き出した。現場における人手不足対策や短工期化への需要が増し、それに対応した当社の工法・技術に対する評価をいただき、当初の見込みより上振れした。建築はこのほど起工した東芝メモリ北上工場により、今年度内の地場ファブの加工需要は高位で推移すると当初からみていた。その一方、来春以降あまり案件が見えてこない心配があったが、ここにきて来年度分も徐々にはっきりしてきた。一般薄板も建設需要や設備投資等と連動し、期待できる動きが見てとれる。自動車向け薄板は東北生産車種の販売堅調などで年度計画を上方修正しており、期待感を持っている。全分野を通じ上期は総じて上振れ状況で堅調といっていいだろう」

――下期に向けては。

 「土木は引き続き災害復旧や減災・防災に加え、エネルギー関係の需要が期待できる。また地域的に一巡した震災復興需要ではあるが、福島の除染廃棄物減容化処理施設や中間貯蔵施設向けの鋼材需要は継続している。建築は今秋から建て方を開始する物件が複数あり、その準備段階として年前半はかなり出荷した。来年の物件が見えてきたことで、これから翌年分のオーダーが入ってくる。プレスコラムが超タイト化していることもあり、当社のJBCR295(建築構造用冷間ロール成形角型鋼管)の厚さ28ミリの引き合いも下期に向けて増えている。自動車は明らかに高操業が見えている。下期も総じて堅調さを維持するものと推察される」

――復興需要の一巡で東北の鉄鋼需要は収束イメージが強かったが、足元は好調のようだ。

 「足元、東北がコンパクトカーの拠点として今まで以上に集積していくことが明らかになった。さらに次世代放射光施設の仙台整備が確実となった。東北に産業、科学技術、人材の集積が促進されるという意味でも、これらのインパクトは大きいと思う。東北の産学官金連携の大きな成果だと思うし、この先の国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致、北上建設実現に向け大きな弾みになればいいと思う。当社も応援していきたい」

――ILCの東北誘致が実現し、その建設や関連インフラ整備、街づくりに鉄が絡めば、相当な需要となるが。

 「JFEスチールだけでなく、エンジニアリングや商社、その関連会社も含め、東北JFEグループ約30社で鉄鋼製品をはじめいろいろな形でお手伝いできると考える」

――下期に向けての注力分野は。

 「建設業の人手不足は構造的で、そのため現場の省力化や短工期化にいかに鉄としてお手伝いできるかとの点は重視している。今後、人手不足の中で社会インフラの老朽化、防災・減災対策を進めなければならないことが予想されるだけに、グループ間連携を密にいろいろな情報をキャッチし、技術提案していきたい。また、繰り返しになるが復興創生期に入り鋼材需要が震災前に戻るとの心配があったが、産業集積や復興道路の供用など道路交通網の整備を通じ、また、出遅れていたインバウンド需要も増えてくるなど、東北でもいろいろな流れが生まれつつある。東北JFEグループで復興後の新しい東北づくりに引き続き貢献していく方針だ」(小室 慎)

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