ペダルをこがないパンプトラック。初開催の世界選手権代表が決定

起伏が連なる特設トラックを重⼼移動で推進してタイムを競うレース。2018年から世界選手権が開催されることになり、世界17カ国で予選会が行われている。日本大会は北海道で開催され、男女各4選手が出場権を獲得した。

text&photo:山口和幸

意外と難易度高め。でも最高に楽しい!

小樽とニセコの中間あたり、赤井川村のアウトドアフィールドに舗装されたばかりのパンプトラックが大会直前に完成した。アスファルト仕様のトラックはこれまで九州地方に1つあっただけで、全国で2つ目。今後は大人2時間1200円で一般開放され、バイクやプロテクターの貸し出しもある。

大会ではBMXのトップ選手やMTBダウンヒル選手が出場し、国内代表を争った。ルールは単純。使用する自転車は通常のもので、微細な引き足による推進が可能な固定式ペダルのみ禁止。予選として1周タイムトライアルを行い、本戦出場選手とその組み合わせを決める。本戦は1対1の勝ち上がりなのだが、2つのコースは図面を片側だけ裏返したようなもので、最後まで勝負が分からないようなスリリングさを演出する。

「最近はパンプトラックの練習を取り入れていて、とても楽しい」というのはオーストラリア代表として2020東京五輪出場を目指す榊原莢(さや)。

「BMXのコースとは違うけど、スキルアップにピッタリ。ここで身につけたスキルをBMXレースでも使えるので、スゴくいい練習だと思います」

MTBダウンヒルのトップ選手である永田隼也は、「全身がもう筋肉痛。しかも30秒間はほとんど無酸素運動です。コブを越えるときの重心移動の体重が重要で、深さも角度もそれぞれが異なるので最適化の対応がタイムアップのポイント」と難易度の高さを証言する。

女子優勝の榊原莢。16歳までは日本選手として活躍したが、オーストラリア国籍を取得して2020東京五輪を目指す
世界選手権出場権を今回の日本大会で獲得した榊原。左が2位の丹野
1対1のバトルは対極でスタートする。会場のコースレイアウトが絶妙で、その演出感は見事

女子結果
1位 榊原 莢(サカキバラ サヤ、18歳、オーストラリア、プロBMXライダー)
2位 丹野 夏波(タンノ カナミ、18歳、神奈川県、学生)
3位 藪田 寿衣(ヤブタ ジュイ、16歳、大阪府、学生)
4位 中村 加奈子(ナカムラ カナコ、47歳、東京都、プロスノーボーダー)

左から2位の吉井、優勝の中井、3位の増田優一、4位の大霜優馬

男子結果
1位 中井 飛馬(ナカイ アスマ、18歳、新潟県、プロBMXライダー)
2位 吉井 康平(ヨシイ コウヘイ、23歳、東京都、プロBMXライダー)
3位 増田 優一(マスダ ユウイチ、17歳、大阪府、学生)
4位 大霜 優馬(オオシモ ユウマ、16歳、神奈川県、プロBMXライダー)

記念すべき第1回大会に参加した選手たち。やはりBMX選手が上位を占めた

大会名: Red Bull Pump Track Japan Qualifier (レッドブル・パンプトラック⽇本予選)
日時:8⽉5⽇(⽇) 10:00〜16:40
場所:AKAIGAWA TOMO PLAYPARK(北海道余市郡⾚井川村)
主催:レッドブル・ジャパン

この日は、猛暑が続く本州とは対照的に、涼しくてさわやかな日差しに恵まれた。北海道の山間部ということもあって観客は300人だったが、会場にはノリのいいMCの声がこだまし、ショーイベントとしては盛大な盛り上がりを見せた。

10人が参加した女子では、予選から圧倒的な速さを見せた榊原が順当に決勝に進出。女子ジュニア世界ランキング3位の丹野夏波が決勝まで勝ち上がって対決。エリートの榊原に1日の長があって圧勝した。74選手が出場した男子は、6月に開催されたBMX世界選手権ジュニア代表の中井飛馬が決勝で吉井康平を制して優勝。

日本大会の男⼥各上位4人は10月13日に米国アーカンソー州スプリングデールで初開催されるRed Bull Pump Track World Championshipへの出場権が与えられた。このうち男女優勝者は渡航費・現地滞在費が全額支給される。予選大会は日本を含む世界17カ国で開催されている。

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