バーレーンGP以来の好成績、紙一重の差で明暗分かれたガスリーとハートレー【トロロッソ・ホンダF1コラム】

 F1ドイツGPで2台揃ってQ1落ちした1週間後のハンガリーGPでは、予選Q3に進出し決勝では中団グループのトップ“Bクラス”優勝へ。まさしく地獄から天国への生還を果たしたのが、トロロッソ・ホンダのシーズン前半戦最後の2連戦だった。

2018年F1第11戦ドイツGP ブレンドン・ハートレー

 しかし走り始めてみれば、トロロッソ・ホンダのマシンは良い感触だった。金曜から土曜にかけてのファインチューニングも上手く進み、フリー走行3回目では9番手・11番手でQ3に進出できるかどうか当落線上ギリギリのところ。ライバルたちにパワーユニットの予選スペシャルモードを使われたときにどうかというところだったが、直前の雨に救われた。

 これまでにもオーストラリアGPやフランスGP、ドイツGPのフリー走行などウエットコンディションでは常にトップ10に位置していたように、トロロッソはウエットで速かった。メカニカルグリップが優れていることと、シーズン開幕前からドライバーたちが賞賛したホンダのフラットな出力特性からくるドライバビリティの良さのおかげだ。

「ドライバーからすれば、トルクの出方はコンスタントでペダル操作に対して正確にパワーが出てほしいものなんだ。常にトラクションの限界ギリギリまでパワーをひねり出したいからね。ペダルの操作とトルクのピークの出方に違いがあると、特にウエットコンディションではトリッキーなことになる。ホンダはその点がとても良いんだ」とホンダ製パワーユニットの特性についてガスリーは語っている。

 スタートでカルロス・サインツJr.の前に出たガスリーは、クリーンエアで走ることができた。おかげでドイツGPで訴えていたような前走車の影響も受けずに自分本来のペースで走ることができた。後ろのケビン・マグヌッセンはチームメイトと較べてもリヤタイヤのマネージメントが得意ではなく、序盤からタイヤマネージメントと燃費セーブに徹してくれたことも味方した。終わってみれば余裕の6位だった。

■ハンガリーGP決勝で好発進を決めたブレンドン・ハートレーだったが……

 逆にハートレーはターン1手前でガスリーのイン側に並びかけるほどの好発進を決めたものの、無用な接触を避けるために引いて後退。ルノー勢とのバトルになったがコース上では抜くことができず、彼らに合せてピットインしたことも命取りとなって延々と前走車のペースに付き合わされるレースになって11位に終わった。

 この両者の結果の差が、今の中団グループの争いの厳しさを表わしている。クリーンエアで本来の力を発揮できれば6位になれるクルマでも、集団に飲み込まれればたちまちポイント圏外に落ちる。スタート直後のポジション次第では、ガスリーとてハートレーのような展開になっていてもおかしくはなかったのだ。

 トロロッソ・ホンダがハンガリーで良い仕上がりを見せたことは確かな事実だ。しかしウエットコンディションに恵まれた予選の結果が純粋な実力を表わしているわけではなく、そのポジションから臨んだからこそ決勝も有利な展開になったが、6位とノーポイントは紙一重だということも忘れてはならない。

2018年F1第12戦ハンガリーGP ピエール・ガスリー

 トロロッソはチームとして今回のマシンが良かった理由をしっかりと分析し把握する必要がある。ハンガリーで予想以上の速さを発揮した理由が何だったのか、そしてそれ以前のレースで予想以下の速さしか発揮できなかった理由は何だったのか。

 それが把握できなければ、今後もセットアップの精度を高めることはできず、予想以上・以下のどちらに振れるか分からない不安定なシーズンが続いてしまうだろう。そしてホンダも車体側にもっと空力セットアップの“幅”を与えられるようパワーアップに努めなければならない。フェラーリ勢が調子を上げてきているように、予選結果に直接影響するパワーユニット・予選スペシャルモードの実戦投入も急がれる。

 ハンガリーGPの6位入賞は福音ではなく、むしろ警鐘だ。そう捉え努力を続けなければ、トロロッソ・ホンダのシーズン後半戦は再び厳しいものになってしまうだろう。

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