英語使い「裏切り者」批判、メドベージェワ選手が見せた配慮とは

By 太田清

コーセー新横浜スケートセンターで演技するエフゲニア・メドベージェワ選手=7月6日

 どこの国でもスポーツなどで成果を挙げ、スーパースターとなるのは大変なことだ。人気があるが故に注目され、言われもない誹謗中傷を受けることもあるという意味でも。アニメ「美少女戦士セーラームーン」が大好きで日本にもファンの多い平昌冬季五輪フィギュアスケート女子銀メダリスト、エフゲニア・メドベージェワ選手(18)がインスタグラムに英語でメッセージを書き込んだところ、「ロシア語で書かないのは祖国への裏切り」と批判するコメントが殺到した。ロシアのニュースサイト「ガゼータ・ルー」が7日までに、伝えた。 

 メドベージェワ選手は7月28日、自身のインスタグラムに日本のドリンクを飲む写真をアップした上で「この有名な日本のドリンクで、新しいシーズンを始めます。とってもおいしい」と英語で書き込んだ。これに対し、ユーザーから「ロシア語で書くのはもう、はやっていないんだ」「ジェーニャ(メドベージェワ選手の愛称)、英語の分からない年配のファンのためにロシア語で書いてくれないか」などのコメントが相次いだ。 

 長年、金メダリストのアリーナ・ザギトワ選手らとともにロシアの女性コーチ、エテリ・トゥトベリゼさんに師事していたメドベージェワ選手は今シーズンから、同コーチの元を離れ、羽生結弦選手を指導するブライアン・オーサー・コーチの元に移籍。現在は同コーチがいるカナダに住みトレーニングを積んでいる。インスタグラムで英語を使ったのは、カナダなど北米のファンを意識したものとみられるが、こうした点が愛国心の強いロシアのファンには気に入らなかったらしい。 

 「コーチを裏切り、今度はロシア語で書くのをやめたのか。よそへ行って他の国のために演技してくれ」「どんな愛国心なんだ。彼女は金のスケート靴のために(国を)裏切った」など辛辣な意見も寄せられた。 

 これに対しメドベージェワ選手は次の投稿で英語とともに、同じ内容でロシア語のメッセージも掲載。それにもかかわらず「ロシア語の投稿はどこへ行ったの?」とコメントされたことが腹に据えかねたのか「ロシア語で投稿したのが見えませんか」と返事した。日本のファンからはメドベージェワ選手の配慮を評価すべきとのコメントも寄せられたという。 

 メドベージェワ選手はインスタグラムのストーリーの投稿でも「ドゥ ユー ラブ ミー?」のフレーズを、ロシア語のキリル文字で書く気配りも見せた。もちろん、批判だけでなく同選手を応援するコメントも多く、英語とロシア語を併記したインスタグラムの写真には11万件以上の「いいね」が付いている。 (共同通信=太田清)

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