【トップインタビュー 富安・田川正之社長】自動車向け引抜鋼管、SCM構築で存在感 各地域・産業分野で「頂点」目指す

――2016年6月の就任から3年目に入った。

 「当社では『社会的に存在価値のある企業』と『社員一人一人が輝き活躍できる舞台を提供する企業』を経営理念に掲げ、その心構えとして『開拓魂商人魂(こころ)』を基本精神に据えている。社員には『原点に立ち返り、顧客やサプライヤーが抱える問題を解決できる想像力や実行力を持とう』と口酸っぱく話し、組織横断的に共通のテーマでディスカッションする場を設けるなど『自分で考える力』の醸成を促している。最近では全社で積極的に提案する傾向にあり、手応えを感じている。そうした中で18年度から20年度の3年が対象の中期経営計画を策定した」

――新中計ではどのような目標を掲げているのか。

 「当社は小さいながらもグループ会社を含めて全国展開しており、ほぼすべての鉄鋼商品を扱っている。各部門においては、多岐にわたる需要分野に対し、それぞれの地域や産業ごとに自ら設定した『頂点』を目指してやってほしいと言っている。一つ一つの積み上げで現状の倍程度の経常利益を確保し、将来を見据えた投資や内部留保に充てていく」

富安・田川社長

――鋼管部門では今春、機械構造用鋼管(STKM)の切断加工がメインの西武金属を完全子会社にした。

 「自動車向けの引抜鋼管分野を強化する一環で実施した。これまでの九州、関東に浜松が営業拠点として加わった。西武金属のように、後継者問題を抱えながらも技術力を備えた企業は多く、今後もこのようなチャンスを捉えていきたいと考えている。引抜鋼管分野ではSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の構築を通じて存在感を高めたい」

――鋼管以外の分野はどうか。

 「売上高の構成比率で最も高く、創業時から主力のブリキ部門は縮小均衡の国内市場において着実に需要を捕捉していき、国内ブリキ業界を守り発展させるのが当社の使命と考えている。鋼板部門では樹脂コーティングや特殊スペックの製品をはじめ、より薄モノに特化しながら、大手と重複しない商流で捕捉していく。チタン・ステンレスは、新潟のグループ会社『メタルリンク』が従来と同じ燕三条地区で工場を拡張移転し、8月に溶接ロボット2機を導入する。従来の自動車向け部品に続き、医療機器をはじめ新たな用途開発に取り組む」

 「建築資材部門では、札幌で形鋼一次加工を手がける富士鋼材センターで設備更新するなど市場ニーズに対応した供給体制を整備する。防雪柵・雪崩防止柵総合メーカー『マルエイ三英』は、新商品の市場投入に向けて技術開発を進める」

――新商品をめぐっては、グループ会社とともに、富安本体の動きはどうか。

 「未来事業開発室が主導する新商材開発部門では、農業用コンテナなどを製造する北日本サッシ工業と共同開発した独自のドリカム基礎一体型架台(太陽光発電パネル架台基礎)でステンレス協会賞優秀賞を受賞し、昨年度には計70メガワットの受注があった。今後はチタンやFRP(繊維強化プラスチック)建材製品の用途開発や拡販を念頭に人員を積極的に配置していきたい。いずれも従来から我々が生業とするトレーディングから派生する事業や需要分野において、付加価値を高める投資に重点を置き、独自性に磨きをかけていく」

――今年は設立70周年、来年は創業100周年の節目に当たる。

 「グループとして行動を起こす上でいいきっかけになる。冒頭に申し上げた『開拓魂商人魂(こころ)』であらゆるサポートを惜しまず、一特約店として顧客の前面に立っていきたい」(中野 裕介)

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