【新社長インタビュー】〈DOWAホールディングス・関口明氏〉環境・リサイクルの複合的機能生かす メキシコの亜鉛鉱山開発推進

――社長就任の抱負からお願いします。

 「見えを張らず、妙なこだわりをもたずに、『柔軟な自然体』で何事にも臨みたい。マーケットの最前線にいる各事業の従業員たちこそが最も有益な情報を持つ。その意見を尊重し、常に聞く耳を持ち続けることを心掛ける」

 「何をやるか、どういった方向性を目指すかは中期計画(2018~20年度)で具体的に示されている。時々の状況を鑑み、そのまま実行できる環境か、修正を加えながら進むべきかなどを所管する事業部門と擦り合わせながら実現に向けて進めていく」

――足元の経営環境をどうみているか。

DOWAホールディングス・関口社長

 「足元の非鉄相場は弱含みだが、悲観する水準ではないし、施策を大幅に変更するような環境ではない。実需も堅調で、比較的良好な環境の中で経営ができる」

 「亜鉛はまだ緩んだ感じはない。需給緩和の影響が経営に出るのは来年以降だろう。来年は買鉱条件の改善も期待するが、需給が緩和すれば価格は上値が重くなる。トータルでどう影響するかはまだよめない。一方で足元の価格水準であればメキシコの鉱山開発は問題なく進められる」

――環境・リサイクル事業では海外で拠点、処理メニューを拡充してきた。拠点間シナジーも期待されるのでは。

 「それは増えてくると思う。当社は国内外に最終処分場を有し、産業廃棄物処理を含む環境事業、リサイクル製錬という機能を持つ。こうした複合的な機能をグループ内で組み合わせて事業展開の機会を作れるのは当社独特の事業構造で、強み。それを市場の変化に上手く合わせていけば商機が生まれるはずだ」

――リサイクル原料の増集荷・増処理にも取り組んでいる。

 「バーゼル法改正で集荷地域のすそ野が広がる期待はある。集荷競争は激しいが、産業廃棄物処理の機能と上手く組み合わせることで、新しいビジネスモデルができないか考えている。まだ具体的なものはないが、近い将来に絵が描けそうな気がするので期待している」

 「中国が輸入禁止した雑品スクラップはそのままでは製錬原料に使えないが、それを廃棄物として受け入れ、製錬原料に仕上げられる可能性がある。それをグループ一貫でできる事業構造を持つのは当社だけで、差別化できるチャンスがある」

――亜鉛自山鉱比率50%をどう目指すか。

 「メキシコで稼働中のティサパと開発中のロス・ガトスで秋田製錬が必要な原料の4割を賄える。さらに、増処理を進める二次原料を加えると市場からの鉱石調達は必要量の半分以下にできる。一方で操業から25年がたつティサパの次を見つける必要はある。ティサパ周辺での探鉱も続けているので山命が伸びれば3鉱山からの鉱石供給で必要量の半分以上を賄える体制がとれる。ただ、まずはロス・ガトスが最優先。現状では予定通り来年7月ごろに生産開始予定だ。予定通り進むとなれば次の鉱区にもう少し人を投入できる」

――米国のパルマー探鉱案件の進ちょくは。

 「すでに一定鉱量は確認済みだが、鉱量1千万トンは確保したい。鉱山業は相場周期の影響を受けるのでティサパ並みの生産規模で10年の山命は欲しい。探鉱にあと3~4年、建設開始は早くて数年後だろう。一方で、良い案件があればそちらも逃さず拾いたい」

――製錬・リサイクル複合コンビナートをどう強化するか。

 「小坂製錬、秋田製錬で老朽設備更新に合わせた能力増強を考えている。小坂では廃滓堆積場の残存年数延長工事や工場の豪雨対策なども進める。こうした事業継続のためのインフラ整備もこの中計の柱で、収益に左右されずに実行する。副産品のアンチモンや錫の回収率向上も収益の柱を太くするために必要で、技術開発やノウハウの蓄積を進める。秋田では亜鉛二次原料の増処理や鉱石由来の不純物対応のための増強投資も検討している」

――タイの亜鉛加工工場の現状は。

 「前期は生産量が1万7千トン弱だったが、今期中に年産能力を2万2千トンに高め、中計期間中に同3万トンまで引き上げる。現在は溶解炉増設の許認可を申請しており、今期中には認可が下りるだろう」

――電子材料事業は。

 「スマホ向けLEDは次の製品をいかに早く上市するかが勝負。太陽光パネル向け銀粉は中国の補助金政策変更の影響が多少あるだろうが、当社は高機能品向けなので大きな影響はないだろう。新製品では深紫外LEDや燃料電池向け材料などの引き合いが強く、サンプルもある程度の量が出荷できている。来期以降の商業化につなげたい。それ以外にも種を仕込んでいるので研究開発費が先行しているが、手を緩めず、次の柱を早く作りたい」

――金属加工事業は。

 「非常に忙しく、生産能力が足りない状況。大きな投資や建設期間を要するライン増設ではなく、まずは既存ラインのボトルネック解消を進め、能力を上げる。また、生産品を高付加価値品にシフトし、数量以上に利益水準を押し上げる可能性を追求する。海外拠点も着実に増強してきたので収益貢献が本格化するこれからが楽しみだ」

――熱処理事業は。

 「こちらも好調。国内製造拠点の再編などが一段落し、海外拠点の増強も順調に進めてきた。利益面でも貢献度が高い事業となってきたので期待している」(相楽 孝一)

 プロフィール

 労務に約9年従事した後、製錬系を中心に歩む。「こうであらねばならぬと凝り固まるのが嫌なので座右の銘はない」と笑う。趣味は読書とワイナリー巡り。健康のため、数年前から食事や散歩などで体重管理にも気を遣う。

 略歴

 関口 明氏(せきぐち・あきら)1983年早大法卒、同和鉱業(現DOWAホールディングス)入社。2011年小坂製錬社長、13年DOWAホールディングス執行役員(非常勤)兼DOWAメタルマイン社長、18年4月上席執行役員副社長、6月に社長就任。兵庫県出身、57歳。

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