悪性リンパ腫と闘いながら小学生バンド指導 「夢は長生き」歌に希望込め

小学生ガールズバンド「ブックベア」の第9期メンバーと音楽監督の原田靖士さん(中央)=熊本市西区

 熊本を応援する小学生ガールズバンド「Book Bear(ブックベア)」の新曲は「夢は長生き」に決まった。バンドを育てる中、悪性リンパ腫が見つかった音楽監督、原田靖士さん(55)=熊本市中央区=の強い思いが、タイトルに込められている。

 小学生のころギターに出合って音楽に親しんできたが、本業は熊本市職員。40代前半に担当した地域づくりの一つとしてガールズバンド結成を思い付き、市などが出資する熊本シティエフエムに提案した。

 2007年、番組の企画でバンドが誕生すると、自ら指導を始めた。練習は毎週土曜に約3時間。地域愛を前面に押し出した約30曲の作詞、作曲も手掛けてきた。

 バンドは昨年9月、健康づくりの推進を呼び掛ける市の初代「いきいき健康大使」に任命された。それを機に健康の大切さを啓発する曲作りを進めていた3月、皮肉なことに自らが悪性リンパ腫に侵されていることが分かった。診断は最も厳しい「ステージ4」。病巣は全身のリンパに及んでいた。

 「これからどうなるのだろう」。さまざまな不安がよぎる一方、「仕事に復帰し、音楽も続けたい」と強く思った。

 抗がん剤治療を始める準備のため、4月に約2週間入院する際は、事情を知らせ、迷惑を掛けるとわびる手紙を職場で回覧してもらった。あまり体を動かすことができず、バンドの指導は椅子に座ることが増えた。ライブ会場までの楽器搬入はバンドメンバーの保護者らに頼っている。

 退院後は2、3週間ごとに休みをもらい、病院で抗がん剤の点滴を受ける。一番つらいのは副作用の吐き気。3日間は体調が戻らないため、できるだけ仕事に支障がないよう通院するのは金曜日。頭髪も抜け、職場では医療用帽子をかぶる。

 「これが最後の曲になるかもしれない」と考えながら、力を振り絞って新曲「夢は長生き」を作った。重量感のあるビートに乗せるメッセージがきちんと伝わるよう、スローなテンポ。歌詞の監修を受けた市には、「元気で長生き」というフレーズは是が非でも残したいと訴えた。

 仕事と音楽活動、そして治療。活動量は病気になる前からかなり減ったが、治療しながら働く「ながらワーカー」だけではなく、「ながら音楽家」もできるだけ長く続けていく覚悟だ。「誰かが喜び、感動するような曲を作り、指導していきたい。長く歌い継がれる学校の校歌を作ることが夢です」(木村恭士)

※「夢は長生き」などを収録したブックベアの10周年記念アルバム「キセキ」は今月リリースされる。問い合わせは熊本シティエフエムTEL096(323)6611。

(2018年8月8日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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