油断できない結核 高齢者発病、若い頃感染

 明治から昭和20年代まで蔓延[まんえん]し、「亡国病」と恐れられた結核。現在は医療水準の向上で激減していますが、高齢者の体内に眠っていた結核菌が目を覚まして発症するケースが多く、決して油断できません。県内唯一の国立結核医療施設である国立病院機構熊本南病院(宇城市松橋町)の山中徹・呼吸器科部長に聞きました。(高本文明)

 -結核といえば、正岡子規、樋口一葉、石川啄木らが思い浮かびます。

 「結核は、明治期から普通に見られる病気で、1930年代から戦後しばらくは死因の第1位でした。2016年では、高齢者を中心に1万7625人が発症し、死亡者は1889人に上っています。熊本県では232人が発症し、36人が亡くなっています。国内の発症者は欧米先進国の1・4~5・1倍にもなります。結核は決して過去の病気ではありません」

 「近年は、若年者や外国で生まれた方、留学生などで若干増える傾向にあります」

 -結核の感染経路を教えてください。

 「結核は、結核の患者さんのせきに混じって空中に浮遊した結核菌を吸い込むことによってうつる感染症です。空気感染しますが、結核菌の感染力は弱く、肺の奥にある肺胞に届いて定着しないと感染できません。患者さんとの接触によって感染することはありません」

 -どんな症状がありますか。

 「2週間以上続くせき、痰のほか、発熱、血痰[けったん]、胸痛、喀血[かっけつ]などがあります。体重減少、疲れやすさ、呼吸困難などがある場合もあります。しかし、無症状で経過する場合も少なくありません。また症状が風邪に似ていることから、医療機関を受診するのが遅くなることもあります」

 「急に重症化することはありません。しかし治療せずにいると、肺の組織が徐々に破壊され、半数程度は死亡します」

 -結核に感染した人のうち、発病する人の割合は。

 「結核菌に感染しても、すぐに発病するのは、10人のうち1~2人ほどです。感染後、数カ月から2年ほどの間に発病します。すぐには発病しない人のうち、約2割は感染してから長期間経過して発病し、残り約8割の人は発病せずに済みます。結核菌を抑え込んで菌が死滅するか、肺の中でいわば冬眠したままの状態になります」

 「体の抵抗力が強ければ、結核菌を吸い込んでも感染しないか、あるいは感染しても発病し難いです。結核菌に感染しているだけでは、他の人に感染させることはなく、発病している人だけが他の人に感染させることになります」

 -結核菌に感染している人はどれぐらい、いるのでしょうか。

 「国内で結核菌に感染している人は5人に1人、約2千万人と推定されています。60代の10人に1人、70代は4人に1人、80代では2人に1人が既感染者、すなわち結核菌の保有者です。その多くは発症者が非常に多かった昭和20~30年代に感染した人たちと考えられます。高齢者は若い頃に結核に感染している場合が多いのです」

 「大部分の高齢者の発病は、若い頃などに感染していて、安定した病巣内で増殖を止めていた結核菌が、何らかの理由で再び増殖を始めて発病するタイプです」

 -どのような人が発症しやすいですか。

 「高齢者をはじめ、免疫力が低下している方です。(1)HIV感染者(2)糖尿病(3)腎臓移植(4)胃の切除手術後(5)抗リウマチ薬や抗がん剤、内服のステロイド剤の使用(6)痩せすぎ(7)喫煙者、などが挙げられます」

(2018年8月8日付 熊本日日新聞夕刊掲載)

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