虎屋、鈴廣など企業の戦略学ぶ 川崎の図書館で社史コレクション

 ものづくりをはじめとした老舗企業が明治時代の変化に対応して生き残った歴史を伝える「社史にみる明治150年」が、川崎市高津区坂戸のかながわサイエンスパーク(KSP)西棟の県立川崎図書館で開かれている。同館は「大転換期の荒波を乗り越えた経験はいまを生きる企業のヒントになる」と来場を呼び掛けている。

 所蔵する約1万9千冊の社史コレクションから、150年以上続き、特色のある企業を中心に57社をリストアップし、日替わりで展示。鉄道開通や西洋技術の導入、新税制など時代の節目に懸命に対応した姿が浮かび上がる。

 和菓子の「虎屋の五世紀・通史編・伝統と革新の経営」(2003年刊)、寝具で有名な「西川450年史」(16年刊)、化粧品などを扱う「柳屋本店400年史」(15年刊)、「養命酒400年記念誌」(02年刊)など創業400~500年の老舗企業の社史が並ぶ。「100年超の歴史ある企業が多い日本の特徴を表している」(同館)という。

 「慶應・明治・大正・昭和、そして平成へ 鈴廣かまぼこの百四十年」(05年刊)では小田原にある同社が、鉄道延伸による国府津駅の開業で大消費地の東京へと出荷する夢を抱き、かまぼこ専業を決意した当時の様子が伝わる。

 また、「一意誠実 ライオン事務器200年史」(1993年刊)では、大阪市で事務用品を扱う同社が、早くから英語や海外との取引を重視して業績向上につなげたことが分かる。

 「なだ万 百八十年史」(2013年刊)には、大阪の老舗料亭として食事、宴会、会議、社交場に加えて宿泊もできる総合的な機能を提供。海軍大臣などを歴任した西郷従道をはじめ明治政府の要人が足を運んでいたことが記録されている。

 同図書館の伊藝秀一さんは「社会の大きな変化に柔軟に対応できた企業が、いろいろなアイデアを生み出して生き残った過程が分かる」と話している。

 展示は9月12日まで。入場無料。日曜休館。問い合わせは、同図書館電話044(299)7825。

展示した社史の中で最も長い500年の歴史を伝える「虎屋の五世紀・通史編・伝統と革新の経営」

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