【関八州鉄屋さん】〈下総ノ國・菊池鋼板興業〉厚板溶断一筋に「直需」貫く

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 千葉県の北部に位置する印西市で厚板溶断業を手掛ける菊池鋼板興業の創業は1985(昭和60)年9月。

 創業者の菊池保雄氏(代表取締役会長、71)は下北半島の漁師一家に9人兄弟の8番目として生まれ育つ。「学校を出たら食いぶちは自分で探すのが当たり前」の時代。折しも高度成長期である。詰め襟服を着た〝金の卵〟は、縁あって都内の特殊鋼問屋や表面処理鋼板販売店で鉄屋稼業に携わり、普通鋼から特殊鋼、ステンレス、非鉄金属に至るまでさまざまな鋼種を取り扱った。

 38歳のときに一念発起し、厚板溶断業として独立起業する。

 89年に千葉の勝田台に210坪強の事業用地を取得。その後の業容拡大とともに工場が手狭となり、地の利を考慮して東関道千葉北インターに好アクセスな新用地を物色したが叶わず。

 そこで、もともと本業とは別の用途活用を模索して印西に購入していた自社所有地に、2015年5月に完全移転した。奇しくも総業から30年の節目に当たる。1300坪の敷地内に、まずは工場建屋1棟(約400坪)を建設。アイトレーサやNCガス溶断機を計8台設置した。

 そして今夏には構内に2棟目の工場建屋(約260坪)を増設。ここに最新鋭の出力6KW門型ファイバーレーザ切断機(日酸ТANAKA製、自動マーキング装置付き)を1台導入し、操業を開始したところである。

 1号棟はガス溶断専用、2号棟はレーザ専用としての活用策が基本路線だが、その具体的な将来図を描いていくのが若き2代目・菊池遼太社長を中心とした次世代スタッフだ。

 昨年6月に代替わりした菊池新社長は、指揮官として父の菊池会長が創業来、大切にしてきた「鉄屋の商道徳」を踏襲しつつ、運動系で成らしたバイタリティを持ち味に柔軟な発想と行動力で「挑戦」に前向き。なにより30代半ばの若さゆえに実に精悍(せいかん)だ。

 現在、地元の千葉全域そして都内を中心に約100社の顧客網を持つが、同業者(仲間)取引は無く、そのすべてが直需取引。これが創業から変わらぬ特長であり、強いこだわりも持っている。

 1社当たりの取引量をあまり大きくせず、一つの業種にも偏らぬよう、需要分野も「広く、万遍なく」を信条とする。かつて不況期に苦労した経験を教訓とし、リスク分散しているわけだが、その分、日々の切板注文は小ロットで細かく、しかも短納期ばかり。

 そこで同社でも「早さ」と「きめ細やかさ」を強みとする。板厚6~200ミリを対象に長尺・短尺の寸法切りや異形加工、穴あけ、開先を手掛ける。これまで「ガス溶断一筋」できただけに、その技術力には定評がある。

 現場では今、若返りを進めており、工場長と副工場長は共に40代。溶断オペレータの技能をさらに習熟させ、顧客ニーズにしっかりと応えながら活気ある現場づくりを主導するのも、新社長の重要な使命である。

 そして今回のレーザ導入で25ミリ以下の薄物をレーザにシフトし、厚物切板をガスに集中させることで設備を効率活用したい考え。レーザについては2号棟内に増設余地を残していることからレールを延長し、2台体制も視野に入れている。

 現在、事務所と営業、現場を合わせて総勢15人強。経験豊富で商いを大切にするベテラン創業者と、そのDNAを継承する率先垂範型の若き2代目との〝親子2人3脚〟でさらなる成長を目指す。(太田 一郎)