金属行人(8月9日付)

 世界が空を注目している。と言っても、15年ぶりに地球へ大接近している火星の話ではない。果たして中国の「青空」はいつまで続くのか。それが世界鉄鋼業の関心事になっている▼世界最大手のアルセロール・ミッタルが先週に行った決算説明会では、聞き慣れない単語が繰り返された。アディチャ・ミッタル社長は「中国政府の『ブルー・スカイ』シナリオによってSOxやNOx排出が規制されている」と説明。この規制によって淘汰された鉄鋼設備が復活することはないと述べ、現在の鉄鋼需給改善に自信を見せた▼現に、中国政府は「青い空を守る戦い」と掲げ、大気汚染対策に力を注いでいる。最近、上海を訪れた人に聞くと「空に星が見えた」という。以前のように国際行事の時のみ人工的に造られていた綺麗な空が、平時でも拝めるようになってきているのは確かなようだ▼中国の青空が続いていれば環境対策が効いている証しであり、鉄鋼生産も抑制される。そのはずなのだが、実際には青空の下で中国の粗鋼生産は過去最高を更新し続けている。空を見ていたら地上で続々と電炉が稼働していた―。そんな絵空事がなければ、中国の青空が世界鉄鋼業の蒼天と一致し続けるだろうが。

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