【新社長インタビュー】〈理研製鋼・神谷祐司氏〉軸受鋼ワイヤ、細径ニーズへの対応強化 新領域開拓へ開発を加速

――就任の抱負からうかがいたい。

 「澤近泰昭社長(現相談役)時代に積極的な設備投資を行いながら財務体質を盤石にしているし、足元の需要は好調だ。目先に大きな心配事はないが、今後に向けて従業員がベクトルを合わせて自らの力を高めることが必要であり、社会における当社の認知度をより高めていきたい」

 「多くの従業員は『今まで通りに頑張れば道は拓ける』と考えているかもしれないが、世の中の変化は激しいし、自動車メーカーの素材の多様化に象徴されるように、お客様は従来の領域を超えようとしておられる。お客様の困り事を聞くことが変化を知る一番の近道であり、営業には『技術を工場から引っ張り出せ』と言っている。辛抱強さや真面目さを生かしつつ、自ら一歩を踏み出すような社風も醸成していきたい」

――現行中期計画(18~20年度)の業績目標は。

理研製鋼・神谷社長

 「売上高は17年度90億円弱から20年度100億円への拡大を目指している。堅調な需要を背景に一生懸命頑張れば達成できるかもしれないが、そういった発想自体を変えたい。この3年間は年3億円弱の減価償却費に対して、年4億~5億円の設備投資を実施してきた。早期の戦力化とともにコストダウン効果も刈り取り、体力をつける。売上高経常利益率(ROS)は10%を目指したい」

――事業の3本柱それぞれをうかがいたい。軸受鋼ワイヤを中心とする特殊鋼・異形材料は。

 「特殊鋼・異形材料は売上高の7割を占める。メーンの軸受鋼の冷間引抜コイル材の月産量は3千トン強で、その7割が自動車関連だ。中長期のトレンドとして、線材よりも鋼線が求められるようになっていくし、ワイヤの中でも細径に対するニーズが強くなっていく。大同特殊鋼の線材二次加工製品の基地として、小径ベアリングの高強度化などのニーズにもしっかり対応し、競争力を高めて、存在感のある会社にしたい。柿崎工場に実験的な伸線機を今月導入するので、長岡センターの知見も入れながら、中期的なニーズの変化に備えつつ開発を強化する。この取り組みを通じて従業員が経験値を積むことに期待している」

――ドリルはどうか。

 「主力のハイスドリルは金属の大物部品加工が減少して市場が縮小傾向をたどってきた中で、残存者利益を得ている状況だ。ドリルは基礎資材であり、なくなることはないが、新しい領域を開拓する必要がある。当社より規模が小さくて、ニッチで高機能な製品領域を開拓しているドリルメーカーはすでにある。国内において小型で精緻な部品の加工が増えていることに着目している。また一般論だが、ハイスドリルは刃部分のハイスと柄部分の構造用鋼を摩擦圧接しており、この製法を超硬ドリルに応用する手もある」

――長岡センターで製造する工作機械は。

 「半導体関連などで更新・増設のリピート機需要が好調だ。一方、当社の工作機械は超精密加工が特徴だが、最先端技術はもっと先に進んでいる。将来にわたり高度化するお客様のニーズに対応できる技術を当社は開発しているのかと問い直している。ドリル工場でも自社の工作機械を使っており、身内が実験台になることもできる。次につながる開発にチャレンジしそこに従事した人達が経験値を積んで、さらにその次に飛躍できるようにする。工作機械でもこの循環を生み出していきたい」(谷山 恵三)

プロフィール

 大同特殊鋼では全材料の営業に携わり、管理部門を含めてオールラウンドに経験を積んだ。ポジティブで変化を恐れない。「One for all, all for oneの精神で目的に向かって力を合わせよう」と説く。

略歴

 神谷 祐司氏(かみや・ゆうじ)1982年(昭和57)同志社大文卒、大同特殊鋼入社。2006年素形材営業部長、09年輸出部長、11年大同特殊鋼上海董事長、15年執行役員鍛鋼品ビジネスユニット長、17年理研製鋼常務取締役、18年6月社長就任。愛知県出身、60歳。

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