コラム凡語:長崎の国連事務総長

 原爆で廃虚とされた長崎・浦上天主堂の聖アグネス被爆像が、ニューヨークの国連本部にある。その国連から初めて長崎平和祈念式典に参加したグテレス事務総長。特別な思いがあるのだろう▼長崎滞在中にツイッターを発信している。国連にアグネス像があることを<大変光栄>と書き、浦上天主堂の破壊と再建にふれ<核戦争の恐ろしさと人々の強さを再認識させる>と目を向けている▼自身の母国ポルトガルは長崎にキリスト教をもたらし、後に禁教として日本人信者が弾圧された。原爆投下直後の死者7万人にキリスト教徒が多く含まれ、浦上の信者も9千人のうち7千人が犠牲となった▼式典でグテレス氏は、昨年の核兵器禁止条約の国連採択を軍縮が進まないことへの多くの国の不満の表れとした。しかし戦争被爆国でありながら日本は反対した。田上富久長崎市長は平和宣言で条約への「賛同」を求めたが、列席した安倍晋三首相はどう聞いたか▼焼け跡から被爆者たちが「人類全体のために声を上げてくれた」とグテレス氏。ただ、日本は被爆者より核の傘の提供国の声に応えてきたのではないか▼<折り鶴は美しくシンプル、損なわれやすい。毎日大切にしていきたい>とグテレス氏。願いを大切にすることで世界を動かす、との思いだろうか。

[京都新聞 2018年08月10日掲載]

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