介護施設の傷害致死事件 関係者に衝撃広がる

 熊本市の高齢者介護施設で、入所者に暴行を加え死亡させた疑いで、職員の男が10日、逮捕された。県認知症対策・地域ケア推進課によると、「施設職員が故意に相手を傷つけて死なせたという事案は県内で初めて」という。職員による虐待の報告が増加傾向にある中、県内で起こってしまった最悪の事態に、関係者らは衝撃を受けている。

 「このようなことが熊本で起きてしまったことがショック」。業界団体でつくる日本認知症グループホーム協会熊本支部(43法人)の高橋恵子支部長(53)は肩を落とす。

 施設管理者として甲佐町でグループホーム運営にも携わる高橋支部長は、高齢者に24時間体制で寄り添う介護の過酷さに加えて、職員のストレスチェックの重要性を強調する。

 「仕事に悩みを抱えていたり、追い詰められたりしている職員がいないか、常に目配りしている」と高橋支部長。高齢者介護のニーズは増加の一途をたどるが、業界は慢性的な人手不足の状態。転職や中途採用で業界に入る人も多く、経験や適性を見極めることが難しくなっているという。

 厚生労働省は今春、介護施設が高齢者の身体を拘束する際の要件を厳格化したばかり。高橋支部長は「業界を挙げて、不適切な対応をなくしていこうと頑張っている最中だった。それぞれが自らの問題として捉え、二度と起きないよう考えていかなければならない」と話した。

 県内でも高齢者虐待の件数は高止まりで推移している。2016年度、県内の介護施設職員による虐待相談・通報は26件。うち10件が虐待と認定された。ベッドの柵で囲んで自由を制限したり、人格を否定する暴言を浴びせたりする事例があったという。

 県は08年度から施設長らを対象に、高齢者虐待防止法や質の高い認知症ケア、ストレスマネジメントなどを学ぶ研修を実施。16年度からは虐待対応に詳しい職員1人を雇用し、事例の分析や現地調査などを行っている。今回の事件について同課は「熊本市と情報共有し、再発防止に取り組む。研修にもさらに力を入れたい」。熊本市高齢介護福祉課は「事実を調査中だが、調査結果を受けて対応を考えたい」としている。

 日本介護福祉士会の石本淳也会長(47)=熊本市=は「容疑者だけの問題ではなく、施設や業界全体の課題。介護に従事する人への教育が不足している可能性がある。業界としてこのような事件が起きないための人材育成、一人で抱え込まない環境をどうつくるかが大事だ」と訴える。(松本敦、清島理紗、西島宏美)

©株式会社熊本日日新聞社

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