平和の尊さを発信 V・ファーレン長崎 広島とピースマッチ

 明治安田J1第21節最終日(11日・エディオンスタジアム広島ほか=8試合)V・ファーレン長崎は首位の広島に0-2で敗れた。通算成績は6勝3分け12敗(勝ち点21)。前節の14位から16位に順位を下げ、最下位名古屋との勝ち点差は2となった。広島は勝ち点を48に伸ばし、2位FC東京とは8差とした。
 被爆地をホームタウンとするクラブ同士の対戦は「ピースマッチ」として行われた。V長崎は0-0の前半終了間際、直接FKを決められて失点。後半、途中出場の中村慶らがシュートを放ったが得点は奪えず、43分にはカウンターから2点目を許した。
 3位川崎は清水に2-1で逆転勝ちして勝ち点39。神戸は元スペイン代表のイニエスタの来日初ゴールなどで磐田に2-1で勝ち、4位に浮上した。最下位の名古屋は鹿島を破って3連勝。鳥栖は浦和に競り勝った。横浜Mは湘南に勝ち、仙台は柏を下した。札幌-C大阪は引き分けた。
 第22節は15日、各地で9試合を実施。V長崎は午後7時から諫早市のトランスコスモススタジアム長崎で鹿島と対戦する。

◎被爆地の願い 世界に届け 広島「86」長崎「89」 背負って入場
 キックオフの約30分前、広島サポーターから突然の「ナガサキ」コール。自然とスタンドの全体に拍手が広がり、V長崎側が「ヒロシマ」と返す。選手たちは広島、長崎に原爆が投下された73年前の8月6日、9日を意味する「86」「89」の背番号をつけてピッチに入場。ともに被爆地をホームとする両クラブが一体となり、サッカーを通して平和の尊さを発信した。
 この日の「ピースマッチ」のキャッチコピーは「One Ball One World スポーツができる平和に感謝」。試合前のセレモニーでは、姉妹校で平和をテーマに交流を続ける長崎商高と広島商高の生徒たちが「核兵器廃絶の声を世界に向けて発信していく」などと“共同宣言”。鐘の音に合わせて全員で黙とうすると、夜のスタジアムは特別な静寂に包まれた。
 会場では多彩なイベントも実施。折り鶴作りのほか、原爆の悲惨さを伝える展示などもあった。中でも多くの人を集めていたのが、誰でも書き込める「ピースメッセージボード」。そこには被爆地の長崎、広島で暮らすからこそ当たり前に発することができる無数の言葉が並んでいた。
 「サッカーができる、応援できる日常に感謝」「きょうも、あしたも、あさっても、ずっと平和が続きますように」…。そして何より「集まったたくさんの想いが世界に届きますように」-。

原爆が投下された日を意味する「86」と「89」のユニホームで入場する両チームの選手ら=広島市、エディオンスタジアム広島

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