的場、地方最多7152勝 「帝王」大井で佐々木超え金字塔

5R、1着でゴール後ガッツポーズをみせる的場騎手=デイリースポーツ社提供
的場騎手について語る兄の信弘さん

ついに歴史が動いた! 還暦を過ぎてもなお、地方競馬の“レジェンド”として活躍する的場文男騎手(61)=大井=が12日、大井競馬5R(ダート1200メートル)を1番人気のシルヴェーヌで勝ち、2001年に引退した川崎の鉄人・佐々木竹見元騎手を抜く地方競馬史上最多の7152勝を達成した。1973年10月16日の初騎乗から4万567戦目。この日の大井競馬場には前人未到の大記録を見届けようと、1万4000人を超えるファンが集結した。

■初騎乗から44年9カ月

初騎乗から44年9カ月、ついに運命の時が訪れた。7152勝目のゴールを切った的場文は、会心のガッツポーズで喜びを爆発させた。ウイニングランでは滴る汗を拭いながらファン、関係者に深々と頭を下げ、大きな声援に応えた。「お待たせしました。やっと達成できました」。何よりも、地元・大井での新記録達成がうれしかった。

「7000勝は川崎マイラーズ。今度はどうしても育ててもらった大井で成し遂げたい思いでした」。まさに有言実行だ。単勝1・5倍のシルヴェーヌを見事勝利に導き、ここぞに強い勝負師の姿がそこにはあった。

■6月の大けが乗り越え

それでも、前人未到への道のりは決して平たんではなかった。6月15日に川崎競馬2Rで落馬。下腿(かたい)挫傷で20針を縫うけがに見舞われた。7月9日に復帰したが2、3着続き。ようやく残り5勝とした時は「昔と違って今は速くて強い馬に乗らないと勝てなくなったよ」と冗談交じりに話していたほどだ。

さあ、あとはどこまで記録を伸ばせるか。「5000、6000勝の時は(佐々木)竹見さんの記録を抜くことは無理だと思っていました。新記録は努力して頑張った結果の神様のご褒美だと思います。8000勝は死んじゃうけど、次は7200勝を目標に騎乗したいです」。それに「人生の宿題」とまで言った東京ダービー制覇(2着10回)もまだ残されている。

「この年になっても騎乗数が落ちないし、自分は珍しい人間で幸せ者だから」と的場文。首のヘルニア、顎の複雑骨折、生死をさまよった左脾臓(ひぞう)と左腎臓損傷もすべて乗り越えてたどり着いた金字塔。尽きることのない向上心で挑戦は続く。馬上で踊るように馬を動かす『的場ダンス』を武器に、燃え尽きるその瞬間まで。来月7日に62歳を迎える“大井の帝王”は、これからも必死にステッキを振るう。

◆的場文男(まとば・ふみお)1956(昭和31)年9月7日生まれの61歳。福岡県大川市出身。血液型A。家族は妻・尚子さんと子供2人。騎手服は赤、胴白星散らし。中学時代に大井競馬場を見学した際、小暮嘉久調教師に勧誘され、71年に騎手見習として小暮厩舎へ。73年10月16日に初騎乗。地方競馬全国リーディングを2回(02、03年)、大井競馬リーディングを21回(83年、85~04年)獲得。2012年11月25日付で庄子連兵厩舎から東京都騎手会所属に。中央4勝。海外での騎乗経験もあり、重賞は13年にソウルの韓日競走馬交流競走を制している。地方競馬重賞は153勝。17年の東京シンデレラマイルで日本最高齢記録となる61歳3カ月23日での重賞勝ちを果たした。

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「黙々とやってきた素晴らしい結果」 兄・信弘さんが祝福

的場文男騎手の大記録達成で、実兄である佐賀競馬の元調教師、的場信弘さん(65)は「黙々とやってきた素晴らしい結果」と祝福した。「佐々木竹見さんのとてつもない記録を抜くことになるとは、以前は思ってもいなかった」と感慨深げだ。

的場家は福岡県大川市で運送業を営んでいた。男4人、女3人の7人きょうだい。末っ子だった文男騎手とは4歳違いの兄だ。信弘さんが先に佐賀市内にあった旧佐賀競馬場で騎手デビューした。「その時、中学1年だった文男が家族と観戦にきて『自分も騎手になる』と言い出して」

結局、同郷の関係者がいた大井の厩舎へ見習として行くことが決まった。九州から出て、遠い東京へ行くことに母親は大反対だったが、騎手の先輩でもある信弘さんが説得した。

「兄から見てもフォームのバランスが良く、そのうちに勝てるようになると思いました」。後に勝ち鞍を量産することになる文男騎手の将来性を見抜いていたのだ。「弟は持って生まれた一筋型じゃないかな。くよくよしない明るい性格も、長く騎手生活を続けるのに役立ったのでは」と振り返る。

◆的場信弘(まとば・のぶひろ)1952年10月、福岡県大川市生まれ。69年4月に佐賀競馬で騎手デビュー、85年4月に調教師開業。佐賀で騎手として、調教師としてもリーディングを獲得。2005年6月に調教師を引退。大井競馬の的場直之調教師は次男。

佐々木竹見元騎手「ここまでよく辛抱して頑張った。記録が抜かれて寂しくないと言ったらうそになるが、今はそれより彼を褒めてやりたい。苦労した分、喜びも大きいだろう」

武豊騎手(JRA最多勝記録保持者)「大先輩で尊敬しかないです。年下の自分にも、ずっと敬語で話してくださって、さわやかな方。おめでとうございます」

的場直之師「本当にすごいし、努力の人です。あと、どれだけやれるかは本人にしか分からないこと。けがに気を付けて悔いのないように乗ってほしいです」

倉重良一大川市長「新記録おめでとうございます。ふるさと大使の的場騎手が、日本一の偉大な記録を樹立されたことは大川市民の誇りであり、大きな勇気にもなります」

=2018/08/13付 西日本スポーツ=

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