従業員の家族の安否確認が重要だった

大阪北部地震、オムロンの対応

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大阪北部地震から数日後の高槻市。家には多くのブルーシートがかかっていた(撮影:編集部)

6月18日午前7時58分ごろ、高槻市や茨木市などの大阪府北部で震度6弱の地震が発生。犠牲者は4人、負傷者は7府県で428人(7月2日時点)にのぼった。また朝の通勤ラッシュ時に重なったこともあり、国交省によるとJR西日本の在来線で153本、大手私鉄5社で計81本の駅間停車が発生。JR西で閉じ込めの救出が完了したのは発生して5時間が経過した午後2時ごろとなり、運行再開が深夜になった路線では帰宅できない人もいた。また、300件を超えるエレベーターの閉じ込め事案も発生。都市型の首都直下地震として課題を残した。

京都駅にほど近い場所に本社を構える大手電機機器メーカーのオムロンは、大阪府内に17拠点、国内従業員のおよそ1割にあたる約1250人の従業員が勤務あるいは居住している。6月18日に大阪府北部で発生した震度6弱の地震は、午前7時58分という時間帯もあり、同社でも多くの従業員が通勤途中だった。

「地震が発生し、安否確認システムへの登録率は非常に早く、地震発生からほどなく90%に達した。年に一度の安否確認訓練だが、やっていた成果があったと思う。訓練以上のことは本番ではできない」と話すのは、同社で海外も含めリスクマネジメントを束ねるオムロンエキスパートリンク グローバル総務部リスクマネジメント主査櫛田昌徳(くしだ・まさのり)氏。

休業は各事業所が判断

同社の安否確認システムは、全社員の情報を確認できると共に、事業所毎にも情報が確認できるようになおり、事業所のIDでログインすればその事業所に勤務する従業員の情報を把握することができる。

今回の地震では、拠点の休業などの判断は、各事業所が出勤率、周辺の通勤交通網の状況や、安否確認システムの内容などを確認しながら総合的に判断した。電車で通勤している社員が多い拠点もあれば自動車通勤している社員が多い拠点もある。

今回の地震は、通勤時間帯だったこともあって社員に出社を促すか、帰宅を勧めるかの判断に迷った企業が多かったとの報道が見受けられた。同社ではどのように判断したのだろうか。

櫛田氏は「当社では、まず防災カードを全社員に配布している。その防災カードに災害発生時の社員行動基準が記載されており、勤務時間外に被災した場合の対応を記載している。

当然ながら、勤務時間外における災害発生時には、すぐに安全なところに身を寄せて自らの安全の確保してもらうことが大事と考えている。安否確認のメールの配信時には、各自の安全確保をお願いした。出社するかしないかよりも、まず自分の安全を確保してもらうことが大事だ。

また、ご家族の安全も大事である。当日は9時10分ごろに地震が発生した周辺地域の公立の小中学校が全て休校となり、そのニュースを聞いて帰りたいという社員・派遣社員がいたが、上司と相談の上、帰れる方は帰ってもらった。共働きの家庭が多い状況であり、余震も多発するなか子どもだけ家に帰らされても困る家庭も多い」と話す。

「従業員の家族の防災が大事」と話すオムロンエキスパートリンク グローバル総務部リスクマネジメント主査の櫛田氏

「家庭の防災」の重要性

今回、通勤時間帯ならではの問題としてもう1つ把握が難しかったのが、社員がどのくらい電車内に閉じ込められているのか把握することだった。

事故発生直後からJR西日本のホームページはアクセスが集中して繋がりにくくなり、ニュースなどで電車が止まっていることは分かったが、「何駅から何駅まで電車が止まっているか」という細かい情報が会社ではチェックできなかった。

反対に、社員の安否確認システムの備考欄に電車の情報を書き込んでくれた社員が多く、そちらから入ってきた情報の方が多かったという。それでも、電車内にどれだけの社員が閉じ込められているかは把握できなかった。これをどのように考えるかは今後の課題だ。

今回の地震を通じて櫛田氏が痛感したのは、従業員一人ひとりの防災意識向上の重要性だ。櫛田氏は、今回の地震についての社内の通達の中に「各自の家庭の防災対策をお願いいたします」と、首相官邸HPの防災対策のリンク先を入れたという。

■家庭防災ハンドブック(首相官邸HP)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html

「地震発生直後、携帯電話が通じにくい状況が発生した。従業員の皆さんにとっては会社よりもまず自分の家庭の方が心配だったと思う。今回は幸いにも携帯電話が利用可能であり、LINEやFace BookなどのSNSで家族の安否を確認した従業員が多かった。

家族の安否が分からない中では、会社で仕事などできない。次の災害が発生し、万が一、携帯電話がつながらないような状況になった場合に重要になってくるのは、家族間での連絡方法の確立だと思う。また、最も重要なのは、各ご家庭における備蓄や家具の耐震固定などの『家庭の防災』だ。これからも従業員の防災意識向上を目指していきたい」(同氏)。

(了)