ペットも熱中症注意! 水分補給に工夫を

 こんなに続いても慣れることがない猛烈な暑さ。熱中症が心配なのは人間だけではない。動物にとっても過酷な今年の夏。熱中症にかかってしまったペットの事例と飼い主たちが実践している暑さ対策を紹介する。

◆症状に驚く
 7月1日、諫早市内の女性が夕方、エアコンを切って1時間ほど外出して戻ると、室内で飼っているフレンチブルドッグ(メス、12歳)がけいれんを起こしていた。息も荒い。急いでかかりつけの動物病院で受診すると、重度の熱中症。体温は42度に達していた。体を冷やし、点滴などの処置をして1泊入院。「犬も熱中症になるんだ」。驚いた女性は「あの日以来。夜中もクーラーを付けっぱなしにしている。散歩も控えています」と話す。
 体温が38度台の犬と猫は足裏以外は汗をかかないため、舌を出して「ハァハァ」と呼吸をすることで熱を蒸散させて体温を調節しているそうだ。しかし、気温や湿度が高いと熱がこもったままになり、体温が上昇。▽呼吸が荒い▽明らかに体が熱い▽よだれが出る-などの初期症状が出始める。重症化すると、ふらつき、ふるえ、意識消失、嘔吐(おうと)、下痢、けいれんが起こるという。

◆入念な対策
 今月10日午前10時ごろ、長崎市の長崎水辺の森公園。天気は快晴。既に強い日差しが照り付ける中、愛犬家グループが木陰でくつろいでいた。飼い主、愛犬ともに暑さ対策は万全のようだ。同市出島町の主婦、石地直美さん(57)は「アスファルトの上は(熱くて)とてもじゃないけど歩かせられない。いつも犬用のカートに乗せて来るんです」。シート部分には水を入れて凍らせたペットボトルを置き、移動中も愛犬が快適に過ごせるよう配慮。木陰や芝生の上を散歩させる間も、ハンカチに包んだ保冷剤を首元に巻いていた。
 ウサギや鳥など、ケージに入れた室内飼いの小動物はどうか。同市矢上町の「小鳥と小動物の診療所」には今年、ウサギと文鳥が熱中症で運び込まれた。熱中症の“患者”は数年ぶりだったという。菊地久弥院長(46)は「小型のほ乳類は高湿度で気温25度以上、鳥は湿度に関わらず29度を超えると危険」とした上で、「水を入れて凍らせたペットボトルをステンレスのトレーに載せ、ケージの上に置くことで、体感温度を1~2度下げることができる」と話した。

犬や猫の熱中症、または熱中症につながる脱水状態をいかにして防ぐのか。諫早市多良見町のたか動物病院の高橋隆之院長(58)に聞いた。

◆獣医のアドバイス(たか動物病院 高橋隆之院長)

夏場は新鮮な水を切らさないように、普段より大きい器にしておくといいですね。人間の場合は塩分が入っているスポーツドリンクを飲む人も多いと思いますが、犬や猫はほとんど汗をかかないので水で十分。ただ、下痢や嘔吐など体液を失うような症状があった場合は、水で薄めて飲ませると有効です。
また、のどの渇きを感じにくくなっている6歳以上のシニアは、えさのドライフードを水でふやかしたり、ドライフードとウエットフードをトッピングして与えることでも水分摂取になります。ドレッシング用のボトルなどに水を入れて飲ませるようにするなど、飼い主が気掛けてあげてください。
元気がなくて食欲が落ちると「夏バテだろう」と軽く考えがち。他の病気の可能性もあるので、ちょっとした異変に気付いてあげられるように、普段の体温や状態を把握しておきましょう。

散歩時には首元に保冷剤を巻く工夫も=長崎水辺の森公園
たか動物病院 高橋隆之院長

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