アマチュアボクシング界が大きく揺れ続けている。
日本ボクシング連盟の会長を務めていた山根明氏が暴力団との交際、助成金の不正流用などで8月8日に辞任を表明した。
しかし、本人が「アマの世界とは今後も関わる」と発言するなど、混乱が収束する気配はない。
そこで心配されるのが2020年東京五輪への影響である。国際オリンピック委員会(IOC)は競技からの除外を示唆しており、早急な組織改革が求められている。
国内もそうだが、実は国際ボクシング協会(AIBA)もガバナンス(組織統治)、財政、判定問題などを抱え、指導力低下が否めない。
今年2月、IOCのバッハ会長は東京五輪の実施競技から除外する可能性を言及している。分配金も凍結。AIBAの改革を要望しているが、その気配はあまり感じられない。
7月の理事会で除外については継続審議となり、11月末から12月初めに東京で開く理事会で再審議される。
AIBAは昨年11月、呉経国会長(台湾)が金銭疑惑を指摘されて辞任。新会長代行に選ばれたラヒモフ氏(ウズベキスタン)は米財務省が「ヘロイン売買に関わる代表的な犯罪者の1人」と断じるほどのいわく付きの人物である。
バッハ会長がガバナンスの不安を口にするのも当然だろう。再提出を求められている改革案。もし納得する内容でなければ除外という選択肢が現実味を帯びてくる。
五輪でのボクシングの歴史は古い。1904年のセントルイス大会から実施され、これまで五輪出場からプロに転向、スーパースターとして活躍したボクサーは数多い。
60年ローマ大会ライトヘビー級金メダリスト、ムハマド・アリ(米国)、76年モントリオール大会でライトウエルター級を制したシュガー・レイ・レナード(米国)らがその代表だが、今を時めくゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)も2004年アテネ大会ミドル級で銀メダルを獲得している。それほど五輪のリングは特別なものなのだ。
12年ロンドン大会で金メダルを獲得した現世界ボクシング協会(WBA)ミドル級王者、村田諒太(帝拳)も「選手第一。それを忘れてほしくない」と発言している。
AIBA、日本連盟がどう信頼を回復するのか。組織を再生し、東京五輪を目指し汗を流している選手が、競技に打ち込める環境を早急に整えるのが責務だろう。このままだと不安は消えない。(津江章二)