印JSWスチール、止まらぬ拡大路線 溶融亜鉛めっき鋼板メーカーのバルドマン・インダストリーズも買収へ

 JFEスチールの持分法適用会社でインド高炉最大手のJSWスチールによる拡大路線が止まらない。今週には同国の溶融亜鉛めっき鋼板メーカー、バルドマン・インダストリーズ(VIL)を買収することでVILの債権者委員会から支持されたと発表した。JSWは印国内だけでなく欧米でも買収攻勢をかけており、積極投資を続けている。

 VILはインド破産・倒産法の下で再建手続きに入っていた企業の一つ。印北部のパンジャーブ州ラジプラに工場を持ち、年産能力は7万5千トン。JSWとはブリキ事業子会社のバラッブ・ティンプレートを合弁事業化した関係がある。会社法審判所(NCLT)の承認を経てJSWが買収する方向だ。

 JSWはモディ政権が推進している破産・倒産法を通じた鉄鋼企業の再建を機に、次々と買収を仕掛けている。7月には経営不振に陥っていた印中堅のモネット・イスパット買収がNCLTから認められた。モネットは印中東部のチャッティスガル州に年産能力150万トンの一貫製鉄所を持つ。

 これまでJSWの製鉄所はカルナータカ州のビジャヤナガルや、マハラシュトラ州のドルビといった印でも西部が多かった。買収を通じ、広大な印市場をくまなく抑える拠点づくりが進むことになる。

 JSWは買収だけでなくビジャヤナガルやドルビ、サラフ(買収した旧マックスチール)など既存の製鉄所でも能力増強を進めている。2020年3月期までに現在の1800万トンを2470万トンへと増やす計画で、これに買収効果も加わる。

 今後も過剰債務を抱えた同業の買収をにらんでおり、オリッサ州で230万トンの製鉄所を持つブーシャン・パワー&スチールの買収にも手を挙げている。アルセロール・ミッタルと新日鉄住金連合およびロシア系ファンドの2者が競っているエッサール・スチールの買収でも「途中参戦」を試みており、エッサールの入札資格問題の行方次第ではチャンスがあると見ているようだ。

 JSWは印国内だけでなく、今年に入り欧米での投資も積極化している。米国では計10億ドルの投資を掲げ、オハイオ州の電炉メーカー、アセロ・ジャンクションを買収。さらに既存の厚板・鋼管事業を強化するためテキサス州で100万トンの電炉を新設する予定だ。

 欧州ではイタリアの名門・ルッキーニの流れをくむアフェルピ・グループを7月に買収。JSWは4年前にも特殊鋼やレール生産に強みがあるルッキーニの買収を試みていた。イタリアには印から競争力ある母材を供給し製品技術を磨く一方、通商措置で鉄鋼輸入が難しくなった米国では一貫生産を強化する方策を採っている。

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