金属行人(8月16日付)

 普通鋼電炉メーカーの4~6月期決算を見ると、前年同期に比べて経常増益など収益が改善したメーカーが増えた。製品価格の上昇でスプレッドが改善したことが理由だが、利益を見ると鉄筋メーカーと形鋼メーカーに差が出ている。スプレッド幅が大きい形鋼メーカーの方が利益は多かったようだ▼同じ鉄スクラップを原料とし、電極・合金鉄など副資材や輸送費の値上がりなどコストの急上昇はいずれも同様だが、製品の市場価格は鉄筋に比べてH形鋼・一般形鋼がトン2万円近く高い。「鉄筋と形鋼では製鋼・圧延コストに差があるが、2万円もの差はない」というのがメーカーや流通の一般的な見方だが、商取引の形態がかなり違う▼鉄筋は先物取引が多い一方、形鋼は店売りなど在庫販売が多い。鉄筋の先物販売は数カ月あるいは1年ほど先の価格動向を想定しながら契約する。出荷時に契約価格より安い市況になっていればメーカーも流通ももうかる。逆に市況が高くなっていれば損をする。そうした不安定な取引形態を改善しようとメーカーが動いている▼鋼材市場は、盆休みが明けて秋の陣に入る。需要の一段増が期待される。製品市況をより強いものにしてスプレッドのさらなる改善を図る季節だ。

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