「一振り稼業」にかける男たち 勝負強さが光るのは? 両リーグ代打成績ランク

阪神・原口文仁【写真:荒川祐史】

パでは鶴岡、伏見らもともと捕手の代打が好成績

 プロ野球の代打は「一振り稼業」と言われる。わずか1打席で結果を求められる厳しい役どころだ。それだけにドラマを生むことも多い。

 プロ野球で代打を務める打者は、大きく分けて3つに分類される。

 1つ目はレギュラー未満の若手打者。代打で成績を上げてレギュラーをつかもうとしている。

 2つ目はベテラン。若手にポジションを奪われたが、打席ではまだまだ投手を威圧する貫禄があり、勝負強さで起用されている。

 3つ目が、代打専門打者だ。これは意外に少ない。打者として入団したからには、誰しもレギュラーを目指す。「代打の切り札」になりたいという打者は少ない。競合するポジションのライバルがいたり、守備面で問題があったりし、結果的に代打専門になっている場合が多い。

 今季の代打成績を見ていこう。

○パ・リーグ(安打数順)

1鶴岡慎也(日)8安打 24打0本 率.333
1伏見寅威(オ)8安打 25打0本 率.320
1福浦和也(ロ)8安打 32打0本 率.250
4枡田慎太郎(楽)6安打 18打2本 率.333
4福田秀平(ソ)6安打 18打2本 率.333
4長谷川勇也(ソ)6安打 21打0本 率.286
4田中賢介(日)6安打 25打0本 率.240
8今江年晶(楽)5安打 8打1本 率.625
8ドミンゲス(ロ)5安打 17打2本 率.294
8渡辺直人(楽)5安打 23打0本 率.217

 今季から日本ハムに復帰した鶴岡は捕手だが打撃もよく、代打でも活躍している。オリックスの伏見も捕手だが、こちらは若手。レギュラーの座を若月、山崎と争っている選手だ。

 ロッテの福浦、ソフトバンクの長谷川は元首位打者。勝負強さを買われて代打で起用されるベテランだ。楽天の枡田、ソフトバンクの福田は、このところ代打専門での起用が多い。枡田は2016年には代打で11安打を打っている。

 楽天の今江はロッテから移籍して不振が続いていた。今季も開幕は代打での出場。しかし、打撃好調でレギュラーの座を奪い返した。

セの代打男は阪神・原口、驚異的な代打率5割超

○セ・リーグ(安打数順)

1原口文仁(神)18安打 35打0本 率.514
2阿部慎之助(巨)10安打 35打0本 率.286
2藤井淳志(中)10安打 50打0本 率.200
4伊藤隼太(神)9安打 35打0本 率.257
5畠山和洋(ヤ)8安打 25打2本 率.320
5大城卓三(巨)8安打 28打0本 率.286
5佐野恵太(De)8安打 31打2本 率.258
8上田剛史(ヤ)7安打 24打0本 率.292
8乙坂智(De)7安打 25打0本 率.280
8中川大志(De)7安打 33打1本 率.212
8亀澤恭平(中)7安打 45打0本 率.156

 セ・リーグの方がDHがない分、代打起用数が多い。

 今季、圧倒的な勝負強さを見せているのが、阪神の原口。代打率5割以上は驚異的だ。しかし、原口も「代打の切り札」に甘んじる気はないだろう。捕手としては梅野に後れを取ったが、他のポジションでのフル出場を期しているはずだ。

 巨人の阿部慎之助も代打で10安打。かつてヤクルトの大打者・若松勉は、晩年に代打で起用され、たびたび殊勲打を打って他球団の投手に恐れられたが、阿部も同じような位置にいる。

 阪神の伊藤は、昨年も代打で17安打。勝負強さが光っている。巨人の大城、DeNAの佐野は今年売り出し中の若手。「代打の切り札」は今年限りにしたいと思っているだろう。

 代打は、一振りで試合を変える力があるが、その割に評価されにくい役割でもある。シーズン終盤にかけて、代打者の活躍にも注目したい。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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