鈴鹿10時間前に知っておきたい、FIAドライバーカテゴライズシステム

 いよいよ8月24〜26日に、鈴鹿サーキットで開催される『第47回サマーエンデュランス 鈴鹿10時間耐久レース』。国内外からトップチーム、ドライバーたちが集い戦うGT3/GT300のレースだが、多くのチームでドライバーの顔ぶれも固まってきた。レースを前に、ドライバー選定に重要な役割を果たす『FIAドライバーカテゴライズ』について学んでおくと、よりその顔ぶれの“意味”が理解できるはずだ。

 今回の鈴鹿10時間には35台のエントリーがあるが、同じGT3/GT300マシンのなかでも、ドライバーの顔ぶれによってクラス分けが行われている。ブランパンGTシリーズではプロ、プロ-アマ、シルバー、アマ等のクラスがあるが、今回の鈴鹿10時間におけるクラス分けは下記のとおりだ。

・プロカテゴリー
ドライバーのカテゴリー分けは適用しない

・プロ-アマカテゴリー
ドライバーのカテゴリー分けが適用され、最大で以下の組み合わせが認められる
プラチナ/ブロンズ/ブロンズ
シルバー/シルバー/ブロンズ

・アマカテゴリー
ドライバーのカテゴリー分けが適用され、最大以下の組み合わせが認められる
ブロンズ/ブロンズ/ブロンズ

 このプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの組み合わせに適用されるのがFIAのドライバーカテゴライズシステムだ。これは近年、スポーツカーやGTカーのレースで採用されるレーシングドライバーの“格付け”のようなもので、高いギャラを払って速いプロを揃えれば勝てるレースではなく、アマチュアにもそのクラスでの勝利を目指せるようにすることで、エントラントを増やす工夫と言える。

 こういったレースに参戦を希望するドライバーは、自らFIAのホームページ上で、自分の過去の戦績等を自己申告してカテゴライズされなければならない。申請には手数料が必要だが、急ぎの場合は少々高めの金額の手数料で、7日間で申請ができる。

■重宝されているシルバー&ブロンズ

 ドライバーはこの申請によって自らのカテゴリーを把握することになるが、近年多くのスポーツカーレースでは、ブロンズやシルバーのドライバーのニーズが非常に高い。今回の鈴鹿10時間は別として、多くの耐久レースではプラチナやゴールドの最大運転時間が制限されていたり、ジェントルマンが出場したいレースの際にはシルバーかブロンズを起用しなければ希望するクラスに参戦できないからだ。

 そのため、昨今では“速いシルバー”か“速いブロンズ”のドライバーが非常に重宝されている。当然その分“稼げる”わけで、現在ゴールドのドライバーは「なんとかして下げられないか」と、申請時に戦績を低く提出するドライバーもいると聞くほどだ。

 ドライバーカテゴライズの際の条件は下記に記すが、これに加えて年齢や、5年以上レースに参戦していないことによる“ダウングレード”があるのがポイントのひとつにもなっている。50歳になったドライバーは、ひとつカテゴリーを下げることができ、55歳になるとさらにもうひとつ下げられる。60歳以上はすべてブロンズとなる。

 このダウングレードシステムを、ある意味で“うまく使った”のが、今季ブランパンGTシリーズ・アジアに参戦しているBMW Team Studieかもしれない。参戦するGT4カテゴリーは、ドライバーが2名ともブロンズでなければならないが、木下隆之/砂子塾長というコンビは、過去の戦績を見れば「なぜあのふたりがブロンズ?」と思われるだろうが、このシステムを活用することで、強力な布陣を敷くことができたというわけだ。

 今回の鈴鹿10時間のエントリーリストを見渡しても、特にプロ-アマカテゴリーにおいて、ドライバーの組み合わせの理由を知ることができるので、ぜひチェックしてみてほしい。

鈴鹿10時間 ドライバーカテゴライズつきエントリーリスト
http://www.suzukacircuit.jp/10h/race/01.html

BMW Team Studieの木下隆之/砂子塾長組81号車BMW M4 GT4

■FIAドライバーカテゴライズの定義

●プラチナ以下の基準を少なくともふたつ満たすプロドライバー。
・スーパーライセンス(F1に出場可能)を保有している
・ル・マン24時間のプロカテゴリー(LMP1/LM-GTEプロ)で優勝した
・WEC世界耐久選手権のプロカテゴリーで優勝した
・自動車メーカーにより給与をもらうファクトリードライバーで、相応の結果を残した者
・国際F3000、CART/チャンプカー、IRL/インディカー、GP2、すべてのFIA世界選手権、IMSAプロトタイプ、フォーミュラEにおいてランキング5位以上に入った経験がある
・F3インターナショナルシリーズ(FIA F3、2011年までのイギリスF3/ユーロF3)、または主要な国際的なシングルシーターのチャンピオンシップ(FIA F2、ワールドシリーズ・バイ・ニッサン、フォーミュラルノー3.5、スーパーフォーミュラ等)でランキング3位までに入賞した
・インターナショナルV8スーパーカーで優勝した
・ポルシェ・モービル1・スーパーカップで優勝した
・アメリカン・ル・マン・シリーズのプロカテゴリーで優勝した
・IMSAスポーツカー・チャンピオンシップのプロカテゴリーで優勝した
・ゴールドの基準を3つ以上満たす
・上記の条件を満たさないものの、活躍と成績によって、FIAがプラチナと見なす者

●ゴールド以下の基準を少なくともひとつ満たすFIA国際シリーズ、または国内シリーズのアマチュア、またはプロドライバー。
・プラチナの基準をひとつ満たす
・第2カテゴリーにあたる国際シングルシーターシリーズ(A1 GP、GP3、ルノーV6、スーパーリーグ・フォーミュラ、ユーロカップ・フォーミュラルノー2.0、ファイアストン・インディライツ)においてランキング3位までに入った経験がある
・地域、または国内のシングルシーターシリーズ(F3、フォーミュラルノー2.0、2009年までのアトランティック・チャンピオンシップ、ユーロV8シリーズ)で優勝した
・2012年からFIA F2、GP2、GP3、FIA F3、スーパーフォーミュラに参戦し、1シーズン中に3回以上表彰台を獲得した
・ポルシェ・モービル1・スーパーカップ、DTM、スーパーGT(GT500、GT300)のシリーズ3位までに入るか、主要地域のポルシェカレラカップ、またはBTCCにおいて優勝した
・主要なGTシリーズ(FIA GT、ブランパンGTシリーズ(プロクラス)、FIA-GT1世界選手権、FIA-GT3ヨーロッパ選手権、ADAC GTマスターズ、イギリスGT、ブランパンGTシリーズ・アジア、GTアジア)、または主要なスポーツカーレースのGTカテゴリー(ILMC、ELMS、ALMS、アジアン・ル・マン、WECのLMP2、IMSAスポーツカー・チャンピオンシップ)において、同等か低いカテゴライズのドライバーと組んで優勝した
・国際競技規則付則L項5.1.7(a)に相当する選手権で優勝、表彰台、ポールポジションを獲得した
・シーズンの同じイベントで、ゴールドのドライバーの平均ラップタイムよりも一貫して速いドライバー(この時要素が考慮されていない場合はシルバーに分類)
・主な活動がモータースポーツによって成り立っており、上記のいずれにも該当しないにもかかわらず、活躍や成績によってFIAがゴールドと見なす者

●シルバー以下の基準を少なくともひとつ満たすアマチュアドライバー。
・30歳未満で、プラチナとゴールドの基準を満たしていないドライバー
・地域、または主要な国内シリーズ、国際シリーズにおいてランキング1位を獲得したか、主要な耐久レースで優勝した
・プロドライバー向けではないシリーズ(フェラーリ・チャレンジ、マセラティ・トロフィー、ランボルギーニ・スーパートロフェオ、ポルシェGT3カップ・チャレンジ)で優勝した、もしくはメーカーが主催する地域、国内、または国際的なシングルメイクの下位カテゴリーシリーズで優勝した(ブロンズドライバーのみが参戦するシリーズは含まない)
・高レベルな国際的なレーシングカートのシリーズに参戦している
・シーズンの同じイベントで、シルバーのドライバーの平均ラップタイムよりも一貫して速いドライバー
・上記のいずれにも該当しないにもかかわらず、活躍や成績によってFIAがシルバーと見なす者

●ブロンズアマチュアドライバー。
・最初にライセンスが発給されたときに30歳以上で、シングルシーターの経験がほとんど、もしくはまったくないドライバー
・以前はシルバーに分類されていたが、特筆すべき結果(タイトル、ポールポジション、または優勝)がない30歳を超えるドライバー
・30歳以下で初めてライセンスが発給、カテゴライズされ、ハイレベルな国際的なレーシングカートのシリーズに出場したことがないドライバー

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