現代のお寺は

 長崎市の正覚寺で先日、「お寺バー」という催しがあった。カクテルを作ってくれた袈裟(けさ)姿の僧侶は「コスプレじゃなくて本物ですよ」と笑顔▲お盆の墓参りの機会に、門徒もそうでない人も自由に集まって飲食しながら語らうことのできる場をつくりたい-と寺関係者。幅広い世代でにぎわう光景に、新鮮で心温まる印象を受けた▲最近、お寺や僧侶が一般の人へ関わりを広げようとする試みが目に付く。県内でも、寺で読経とジャズのコンサートを開いたり、婚活男女に出会いの場を提供する「寺コン」を開いたり。僧侶が飲食店に出向いて客の悩み相談に応じる「お坊さんスナック」という催しもあるとか▲背景には、地域社会の高齢化に伴って、寺と檀家が支え合う昔ながらの関係が先細っていく懸念がありそうだ。仏教のような伝統的な宗教の存在感が薄らぎ、今や日本人の多くが無宗教といわれることもある▲そんな現実を踏まえれば、宗教者が時代に合わせ、社会に開かれた在り方を模索するのは、自然の流れなのだろう▲一方、きのうは長崎市の光源寺で毎年恒例の「産女(うぐめ)の幽霊」のご開帳。大勢の人が幽霊の像や掛け軸を見ながら、幽霊になってもわが子を守る母の愛の話に耳を傾けた。変わる時代の中で変わらぬ寺のにぎわいにも、また心が温まる。(泉)

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