“新車のヘリテージカー”が登場!? ヘリテージカーの代表、イギリス車は今年も百花繚乱【オートモビルカウンシル 2018】

WAKUI MUSEUMブース

クルマ趣味の入り口であり、ゴールが無いとされるイギリス車

クルマの趣味にはいろいろな傾向があるが、中でもイギリス車(あえて英国車と書きたい)は、身近なところではオリジナルミニなどは台数も多く親しみやすい一方、それを契機に英国車にのめりこんでいくと「もっと速く走らせたい」「もっと速いクルマにしたい」「当時の雰囲気に改造してみたい」「もっと古い車種に乗ってみたい」「もっと上級のモデルに乗ってみたい」などと対象が際限なく広がることがある。

MG、ロータス、オースチン、ジャガー、ロールスロイス、ベントレー……魅力的なメイクスの多さも英国車の大きな魅力でもある。そのため、英国車趣味には踏み込んだらゴールが無いとも言われるほどだ。そんな趣味マインドを「オートモビルカウンシル2018」は容赦なく刺激してくれた。展示台数の約3割をまさに英国車が占めていたからだ。

WAKUI MUSEUM、“1953年型の新車”「ラ・サルト」をアジア初公開!

WAKUI MUSEUMブース

もはや芸術品の域に達するクラシックロールスロイス、ベントレーを中心としたイギリス車の販売と整備を得意とする埼玉県加須市の「WAKUI MUSEUM」も、オートモビルカウンシルでは重要な出展ショップの一つだ。ロールスロイスとベントレーを対象に、自社工場で高いレベルの修復やメンテナンスを行い、次の世代に「20世紀の文化遺産・機械遺産」として継承する取り組みで知られている。

そのWAKUI MUSEUMは今年、なんと「オリジナルモデル」を会場に展示して大きな話題となった。それが英国で製造され、アジア初公開となったラ・サルト(La Sarthe)だ。「もしあの時代にあんなクルマがあったら」と夢想することは、クルマ好きなら少なからず経験したことがあるだろう。ラ・サルトはまさにその夢を現実にしてしまった一台なのだ。

WAKUI MUSEUMブース
WAKUI MUSEUMブース

その仮定は「もし1950年代に、ベントレーがル・マン24時間レースで戦うためのスポーツカーを作ったらどんなクルマになるだろう」というもので、この「夢」に合わせて、シャーシは同時期のベントレー Rタイプのそれを使用。当時のベントレーのモチーフを盛り込んでデザインされた流れるようなボディと本革がふんだんに使われたインテリアは、21世紀になってゼロから新たに生み出されたものとは思えない美しさとリアリティを備えている。名前はむろんル・マン24時間レースが開催される「サルテサーキット」から取られたもので、年式が1953(2018)年とされているのも粋だ。

かつての名車を再生したわけでも、レプリカでもなく「あの当時だったらこんなクルマになっただろう」という夢物語をリアルなクルマとして登場させる方法は、今後の新しいヘリテージカーの楽しみ方になるのかもしれない。

WAKUI MUSEUMブース

英国で製造されるラ・サルトの日本での販売権を得たWAKUI MUSEUMは、昨年コーチビルダーとしての道も開いていきたいと語っていた。まさにその扉を開くラ・サルトは、ル・マン24時間にちなんで世界で24台のみが生産される予定だ。価格は55万ポンド(約7800万円)である。

なお、ラ・サルトの脇にはかつてル・マンを戦ったベントレーとして4 1/2リッター“ブロワー”(1929年)が展示され、ラ・サルトとの見事な共演を見せていた。

アストンマーティン DBS スーパーレッジェーラも日本初公開!

アストンマーチン DBSスーパーレッジェーラ

つい先日の6月27日、日本でプレス発表が行われたばかりのアストンマーティンの新たなフラッグシップモデルであるアストンマーティン DBS スーパーレッジェーラもオートモビルカウンシルに早くも来場していた。日本での一般公開はこれが初となる。

スーパーレッジェーラは「Superleggera」と記し、イタリア語で「超軽量」を意味する。これはベースとなったDB11よりも77kgもの軽量化を実現したことによる。アストンマーティン・ジャパンは他にも本国の「アストンマーティン ワークス」がレストアを行ったDB6 MkIIヴォランテの展示も行っていた。

今後アストンマーティンでは「ヘリテージ」を新たな柱として展開していく予定だという。時代を経ても変わることのないアストンマーティン105年の伝統を感じさせるブースは「CLASSIC MEETS MODERN」というオートモビルカウンシルのテーマを見事に体現していた。

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初代レンジローバーの2ドアにクラクラ

UK CLASSIC FACTORYブース

クラシックレンジローバーとも呼ばれる初代レンジローバーは、シンプルなデザインと愛嬌のある丸ライト、大きなウインドウを特徴とする高級4WDの祖だ。日本でも人気が高い初代レンジローバーだけに、オートモビルカウンシル2018では4台が姿を見せた。しかもそのうち3台が2ドアだった。レンジローバーの2ドア?と思うかもしれないが、これが1970年にランドローバー レンジローバーとして登場した本来の姿なのだ。

4ドアよりもさらにコンパクトでシンプルな佇まいを持つ2ドアレンジは、ボディカラーも軽快で、いかにも1970~80年代の英国車という色味が魅力だった。からし色に塗られた1973年と1982年式の2ドアレンジを2台並べたのは英国車を得意としているショップ「UK CLASSIC FACTORY(横浜市都筑区)」で、どちらも時間と費用をしっかりかけてレストアされた美車だ。

手が届きそうな価格のダイムラーリムジンにざわつく

ガレージイガラシブース

ロールスロイス、ベントレー、アストンマーティン、フェラーリなど欧州製高級車を筆頭に、あらゆる修理・メンテナンスに対応する埼玉県さいたま市の「ガレージイガラシ」は、ダイムラーやロールスロイスなど4台を展示した。

特に気になったのがダイムラー DS420リムジン(左から2番目/1980年)で、1968年の登場以来1992年に生産が終わるまで英国の王室や上流貴族や政府関係者で愛用された「英国を代表するリムジン」である。ベースはジャガー420(旧マークX)で、ジャガー製の4.2リッター直6DOHCエンジンを搭載する。豪華なリムジンだが、価格はロールスロイスよりも安かった。しかし、さすがはリムジンだけあって基本的には注文生産で、ほぼ手作りで送りだされていた。それが、この個体は335万円というプライスタグ!クルマの格や性格を考えると安い!と感じてしまった。

数千万円のクルマから、このように思った以上にリーズナブルで手が届きそうなクルマが並ぶのもオートモビルカウンシルの楽しみといえよう。

[レポート:遠藤イヅル/Photo:和田清志]

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