高炉3社、設備投資3年連続増 18年度5%増の8350億円、上工程中心に基盤整備

EV普及で自動車鋼板ライン増強

 高炉大手3社が2018年度に計画する設備投資額(連結、工事ベース)は総額8350億円と前年度実績比で4・7%増える見通しだ。前年度実績を上回るのは3年連続。各社とも上工程を中心に国内生産拠点の製造基盤整備を継続し、安定生産とコスト削減による競争力の強化を目指す。電気自動車(EV)化などを背景とした高張力鋼板(ハイテン)の増産ニーズに対応するため、自動車鋼板用のライン増強も相次いでいる。

 新日鉄住金、JFEホールディングス、神戸製鋼所の18年度設備投資計画を合算した。新日鉄住金の設備投資は日新製鋼を含む。

 新日鉄住金は4400億円と前年度実績比6・8%増やす。上工程の製造基盤整備では室蘭製鉄所(北海道室蘭市)と君津製鉄所(千葉県君津市)でそれぞれコークス炉のパドアップを実行中。5月には鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)で進めていたコークス炉増設が完了し、コークス生産能力の不足が着実に解消している。

 一方、下工程では君津で数百億円を投じ、自動車ハイテンを生産する溶融亜鉛めっき鋼板ライン(CGL)を1基増設する。EVをはじめとする自動車の電動化などを背景に、より高強度な超ハイテン需要が拡大し、現有設備では能力が不足することから生産体制を強化する。高強度と高加工性を両立した高機能な超ハイテンを増産する。

 JFEホールディングスの設備投資は2500億円。9年ぶりに2500億円を上回った前年度実績(2572億円)並みの高水準を維持する。総額のうちJFEスチールは連結ベースで2300億円の計画。昨年度の2388億円とほぼ同水準となる。

 JFEは単独粗鋼生産で年3千万トン(17年度は2846万トン)の安定生産を目指しており、主力の西日本製鉄所で重点的に能力増強を進める方針。同製鉄所倉敷地区(岡山県倉敷市)で約400億円を投じ、年産能力200万トンのスラブ連続鋳造機を新設。21年2月の稼働を目指す。大型高炉3基の製銑工程に対し生産能力が不足していた連鋳機を増設し、ボトルネック解消で粗鋼生産量を引き上げる。

 神戸製鋼は12・8%増の1450億円を計画。鉄鋼関連では自動車用超ハイテン需要の拡大に対応するため、加古川製鉄所(兵庫県加古川市)で最新鋭の熱処理機能を持つ連続焼鈍設備の新設に着手した。総額約500億円を投じ、冷延ミルの増強も併せて進める。

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