【U-12アジア選手権】侍U12仁志監督がアマチュア野球界に提言 「勝ち負けは指導者の責任」

「第10回 BFA U12アジア選手権」セミファイナルで韓国代表に敗れた日本代表【写真:Getty Images】

宿敵・韓国相手に3-4で敗れた日本代表

 台湾・台北で開催されている「第10回 BFA U12アジア選手権」は16日、セミファイナルに入った。予選グループA2位の日本は同グループB1位の韓国と対戦し、3-4で惜敗。連覇を狙ったが決勝進出は叶わなかった。

 1点差の僅差で韓国に敗れた仁志敏久監督は「うーん、惜しいような、惜しくないような感じですね。チャンスはあったし。子どもたちには少しずつ、こちらの言いたいことが伝わってくれているような気はするんですけど、やっぱり、伝えきれていないのかなとも思いますし」と考え込んだ。

 攻撃では相手投手や守備の乱れでチャンスをもらったが、生かしきれなかった。3回に勝ち越しを許した直後の4回。2死二、三塁で矢竹開がエンドランで一ゴロを打つと、相手一塁手が失策。その間に三走・玉城功大に続き、二走・真栄里修一も一気にホームを狙ったがアウトに。同点に追いつき迎えた5回。2つの四球と相手の失策で無死満塁のビッグチャンスが到来した。しかし、空振り三振、右飛、空振り三振と無得点に終わった。

 仁志監督は勝ちきれなかった要因をこう語った。

「相手ピッチャーの球が速く、変化球もいい。そこでじゃあ、自分が打つためにはどうするかということをまず考えないといけない。圧倒的に相手のピッチャーの方がレベルは2枚も3枚も上だったので、そういう相手と対峙した時に打つ方法を考えてほしいんですよね」

 韓国の先発・KANG Jaeyeopは身長181センチ、体重72キロと体格が大きく、投げるボールのスピードが速かった。コントロールはバックネットに突き刺さったり、捕手の手前でワンバウンドしたりするなどあまり良くなかったが、ストライクのボールは威力もあった。

「いつもと同じようにやっていたらやれるのは目に見えている。そこで打つ方法を考えないといけないけど、こちらが言ってからじゃないと気がつかないし、やろうとしないところがある。やっぱり、良くも悪くも『ボールをよく見る』ということが、日本の今の指導の中では浸透し過ぎてしまっているように思います。

 子どもたちが本来の力を発揮して相手に勝つ、要するに打席に入ったら打ちに行くということができにくい。ここの子たちだけではなく、プロ野球選手のようにその打席をうまくこなそうと思ってしまうところが、日本の少年野球には浸透し過ぎてしまっています。決して悪いことじゃないんですけど、でも、いいとも言い切れないことなんですよね」

楽しむことで逃げることは「一番楽な指導」

 選手たちが考え、工夫するためには彼らが選択するための知識や情報が必要だ。その時に教えることと押し付けることの線引きは難しいが、放任ではいけない。

「普段、子どもっぽい子ほど、緊張しがちになりますね。緊張することは凄くいいことなんですけどね。緊張する試合に対してどう対処するか、普段からやっておいてほしい。いつでもどこでも楽しんでしまうと、こういう緊張から逃げてしまったり、試合でうまくいかなかったことを笑ってごまかしてしまったり。そういう傾向が最近のアマチュア野球では広がってしまっているように感じます」

 勝利が悪のように思われ、最近では「勝ち負けじゃない」とか「楽しもう」と言った声が増えてきている。

「それを言ってしまったら、指導者はいらないですかね。勝ち負けが楽しむことで逃げてしまうのは、一番楽な指導なんですよ。やっぱり、勝ち負けは指導者の責任だと思います。今日は、まだまだ伝えきれていないんだなぁということを感じました」

 得点するための状況を作るために、仁志監督は「少年野球はセカンドに送っただけで点にならない」と、この日はエンドランも使った。結果として得点には結びつきにくかったが「最高の形にはならなかったですけど、ちゃんとやってくれて、それはすごくよかったと思います」と称えた。トライアウトを受け全国から集まった15人の“小さな侍”たちの戦いも残すところあと2戦。目指してきた連覇はならなかったが、この先の野球人生につながる戦いにするためにも、このチームの集大成を見せていく。(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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