鉄道車両の解体場

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留置線で解体される日を待つ東武1800系

 乗り物としての役割を終え、いつの間にか車両基地から消えた鉄道車両に「会える」場所がある。残念ながら、譲渡先の他社や動態保存、静態保存といった素敵な状況とはほど遠く、そこは「最悪な場所」ともいえる解体の現場だ。

 東京・浅草から東武伊勢崎線で群馬県・館林へ。気温の高さで知られるのどかな街を散策し、駅前の小さな食堂で腹ごしらえをしてから、再び駅に戻った。乗り損ねると次の電車は1時間後なので、発車時刻までたっぷり余裕がある状態でホームへ行き、2両編成のローカル電車に乗った。

 目的地は、鉄道車両の解体に特化した施設だ。この日はどんな車両が解体されるのか情報が無いまま、行き当たりばったりで訪ねてみた。

 筆者の予想は「東武の線路とつながっているから、トラックで陸送される他社の電車よりも、ここまで自力回送できる車両の確率が高いだろう。おそらく廃車が進む東武8000系か、伊勢崎線(スカイツリーライン)と直通運転する東京メトロ日比谷線の03系ではないか」という程度の薄っぺらい内容だった。

 解体場の最寄り駅から15~20分も歩いただろうか、遠くに赤っぽい車両が見えてきた。「東武で赤い電車といえば、ひょっとして急行『りょうもう』の1800系か?」

 1800系は浅草と両毛地区を結ぶ有料急行として活躍した後、たまに臨時電車や団体電車として走るのみとなった。赤い車体に白い帯というカラーはとても鮮やかで、晩年でも古さを感じさせなかったが、それとこれとは別。最後まで残った1編成が2018年5月20日の「ラストラン」をもって、惜しまれながら引退した。

 赤い電車が止まっている留置線に近づくと、1800系と確認できた。梅雨明けが発表される数日前の出来事だ。車体は強い日差しを浴びて輝き、今すぐにでも走りだしそうだった。

 それにしても美しく優雅な車両だ。初代ブルートレイン20系客車や新幹線0系のような筆者が好きな「流線型の造形美」とは異なるが、美しい。大きな固定窓が整然と並ぶ車体側面や、赤系統なのに毒々しくない上品な色合いが理由だろうか。

解体される東京メトロ03系

 留置線から作業スペースに目をやると、東京メトロ03系が解体されていた。少しずつ部品や機器が取り外されていき、重機で車体を持ち上げられる場面もあった。

 引退した鉄道車両のうち、他社に譲渡されたり、博物館や公園で保存されたりして、何らかの形で“生き残る”のはほんの一握り。ほとんどの車両はこのようにスクラップされる運命にある。

 解体の現場を見るのは心地よいものではないが、形ある車両のはかなさやありがたさを再認識させてくれた。

 ☆寺尾敦史(てらお・あつし)共同通信社映像音声部。1800系は本格的な解体の前でしたが、それでもヘッドライトは外されていました。