【特集】SUGIZOさん「パワーの源」

脱原発、難民支援の20年

再生可能エネルギーで作った水素の電気で楽器を演奏するSUGIZOさん=2017年12月、さいたまスーパーアリーナ 提供LUNA SEA inc.

 人気ロックバンドの「LUNA SEA」、「X JAPAN」のギタリスト・SUGIZOさん。脱原発や難民支援など社会問題に取り組んでから20年。再生可能エネルギーによる水素を使った電気でライブを開催したり、海外の難民キャンプで楽器を演奏したりと、精力的に活動を続ける。そのパワーの源を語った。(共同通信=原子力報道室・杉田正史)

 180度の変化

 ロックンローラー。まさにこの言葉がぴったりな生活だった。深酒にタバコ、はいつくばって帰宅しても全身の擦り傷に記憶がない。「世の中全てが壊れてしまえばいい」。ネガティブな感情が支配的だった。

 1996年、娘が生まれた。都合のいい話だが、これまでの自分本位な考えや生き方は「娘のためにと、180度変わった」。

 娘への愛情は成長とともに、同年代の子ども、さらには社会全体に広がっていった。環境問題や海外の紛争で犠牲となる子どもらの姿と娘とを重ね「社会を良くしたい」との気持ちが芽生えた。

 実行

 環境問題に目を向けると、原発が抱える矛盾や再生可能エネルギーの可能性を知った。

再生可能エネルギーで作った水素の電気で楽器を演奏するSUGIZOさん=2017年12月、さいたまスーパーアリーナ 提供LUNA SEA inc.

 原発から出る使用済み核燃料など核のごみの行き場がない―。「放射性物質の半減期には相当な時間がかかる。(原発政策は)かなり無責任で、次の世代まで危険をなすり付け、危険を残すのは、この時代の恥だ」と憤った。

 坂本龍一さんを中心とした脱原発プロジェクト「STOP ROKKASHO」にも参加。2008年には、ウクライナでのコンサートツアーの合間を見て、過酷事故が起きた旧ソ連チェルノブイリ原発に足を延ばした。現地では「(再び)惨劇を起こしてはいけない」と痛感した。だが3年後、東京電力福島第1原発事故が発生。最も恐れていたことが現実となり、心の中は絶望感しかなかった。

 一方で月日がたち、故郷を失った住民を尻目に、原発再稼働の流れができあがっている。反発するかのように、脱原発を踏まえた再エネ活用の社会にしたいとの気持ちが強くなった。

 昨年12月、さいたまスーパーアリーナで開催したLUNA SEAのライブでは、メンバー全員の楽器に使う電気を、再エネでつくった水素で賄った。会場近くに設置した燃料電池車から電気を引いたことも相まって、「新鮮な電気で、演奏のクオリティーも高くなった」。大勢の人の協力や再エネによる水素の製造には課題も山積するが、今後も音楽に使うエネルギーにこだわりながら、再エネの可能性を広めていくつもりだ。

 現場主義

 16年3月、シリア人が生活するヨルダンのアズラックとザータリの難民キャンプを訪問した。現地を自分の目で見て体験しなければ、意味がないという気持ちからだった。

 難民キャンプでは、現地の人は生きていくことの保証はされているが、ぎりぎりの生活を送っている印象を受けた。敷地は鉄製の柵で囲われるなど管理された日常。収容所のように見えて「つらく、重たい気持ちになった」。

難民キャンプで現地の人と交流するSUGIZOさん=2016年3月、ヨルダン 撮影者 Kei Sato

 どうすれば現地の人と交流を持てるだろうかと考え、バイオリンを調達して、坂本九さんの「見上げてごらん夜の星を」や自分の曲などを演奏した。静かだった会場は一転、子どもや女性らは抑えていた感情を解放させ、輝いた表情で踊り騒いだ。驚くほど喜んでくれる姿を前に、心の潤いを求めているのが伝わってきた。

 この体験で、音楽を通じた難民支援の重要性を認識した。今年10月には、以前より関心のあったパレスチナ問題に関わりを持つため、ヨルダン川西岸パレスチナ自治区ラマラなどでのコンサートを計画している。

 理想

インタビューに応じるSUGIZOさん=2018年8月10日

 脱原発や難民支援といった活動を続ける中で、「音楽と社会問題は切り離すべきだ」とのネガティブな意見も耳に入ってくる。欧米では、身分に伴った義務があるという考え方「ノブレス・オブリージュ」が浸透しており、アーティストや芸能人らも社会問題の解決に関わる。しかし日本では、批判されるリスクを避け、行動を控えて意識が高まらないと感じる。

 「音楽や芸術は社会のうねりとともにある。自分が良いと思うことを誇りを持ってやっていく」。アーティストは理想を唱えて当たり前で、社会に対し理想や希望を投げかけなければならない。批判的な意見は気にせず、信念を貫くようにしている。

 世の中を良くしたいと思った20年前より、社会問題は多くなっている。災害も増えている。だが、被災地や難民キャンプに足を運び、そこにいる人の痛みをかみしめながら、未来への希望に昇華して伝える。それが自分自身の役目だと思っている。

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共同通信

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