ヘイト規制条例「早期制定を」 県有識者会議で意見相次ぐ

【時代の正体取材班=石橋 学】県の人権施策のあり方を議論する有識者会議「かながわ人権政策推進懇話会」が20日、横浜市内で開かれ、ヘイトスピーチ対策を巡って意見を交わした。ヘイトスピーチ根絶に向け、県独自の対策の実施を打ち出した黒岩祐治知事の要請を受けたもの。委員からは、事前キャンプや競技会場になっている2020年の東京五輪も見据えた緊急課題として規制条例の早期制定を求める声が相次いだ。

 冒頭、県は13年度以降、ヘイト団体によるデモや集会が県内で23回行われたと報告。在日コリアンで保育士の尹(ユン)卿恵(キョンヘ)委員は、16年施行のヘイトスピーチ解消法が表現の自由との兼ね合いを理由に禁止や罰則規定のない理念法にとどまっている問題点を指摘。14日に極右政治団体「日本第一党」が川崎駅前で行ったヘイト街宣を例に「表現の自由を盾に警察の警備の下、差別が行われた。禁止しなければヘイトスピーチは止められない」と問題提起した。

 委員からは「差別する自由や権利は国際条約上も認められていない」「神奈川は川崎を中心にヘイトが横行していると全国的に知られている。国の対策を様子見するのではなく、模範になる条例を真っ先に作るべきだ」と条例による規制を求める意見が続いた。炭谷茂座長も京都朝鮮学校を標的にしたヘイト団体による街宣事件を引き、「判決ではヘイトスピーチは表現の自由の保護に値しないと明言されている。表現の自由を理由に思考停止せず、地方自治の観点から対策を講じなければならない」と強調した。

 阿部裕子委員は「ネット上では特定の民族を殺せと殺人教唆がまかり通っている」と緊急性を指摘。「野放しのままで五輪開催に支障はないのか。期間中にヘイトが行われないことをただ祈るのか、条例で安全策に打って出るのかが問われている」と投げ掛けた。

 12月開催予定の次回もヘイト対策を議題にする。委員からは黒岩知事の出席を求める声も出た。

県のヘイトスピーチ対策を巡り意見を交わす委員ら=横浜市開港記念会館

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