ホットコーナーを担う初出場19歳 阿部希は侍ジャパン女子代表イチの元気印

侍ジャパン女子代表・阿部希【写真:石川加奈子】

橘田監督が寄せる厚い信頼、元気と同時に冷静なプレーで貢献

 第8回WBSC女子野球ワールドカップ(22~31日、米国フロリダ)で6連覇を目指す侍ジャパン女子代表。選手紹介第4回は、日本のホットコーナーを守る阿部希内野手(ハナマウイ)に迫る。

 初出場の19歳はチーム一の元気印だ。身長157センチと小柄ながら、躍動感あふれる動きで打球に猛チャージ。常に大きな声を出し、心底楽しそうにプレーする。

「ホットコーナーなので、元気じゃないとね。その一方で、冷静にプレーできる選手」と橘田恵監督の信頼は厚い。指揮官が初めて指揮を執った昨年9月の第1回BFA女子野球アジアカップで活躍した秘蔵っ子の1人だ。

 今大会は特に、阿部の見せ場が増えそうだ。グラウンドは芝が長く、チップが多い人工芝のため、バウンドする度に打球が失速する。「思ったよりも打球が止まるので、日本の感覚だとバント処理が間に合わないです。それを頭に入れておないといけないですね。逆に攻撃では有意義に使える場面があるかなと思っています」。17日(日本時間18日)から始まった現地練習で阿部は着々と対応を進めている。

 日体大硬式野球部の練習参加生である阿部は、日本を発つ前、仲間に6連覇を約束してきた。「いい環境で優しい人たちと一緒に練習させてもらっていることへの感謝と、ここで学んだことを生かして6連覇を報告できるように頑張ります、と伝えました」。全部員の前で堂々と宣言すると、多くの先輩や同級生から励ましの言葉を受けたという。

 その中には、154キロ右腕で今秋ドラフト1位候補の松本航投手(4年)もいた。7月に米国で行われた「第42回 日米大学野球選手権大会」で最優秀投手賞を獲得した松本に「おめでとうございます」と声を掛けると、「阿部ちゃんも頑張って」と激励された。侍ジャパン大学代表のエースから女子代表の新鋭へのエール。6連覇への思いが一層強くなった。

日体大硬式野球部の練習参加生、週末はクラブチームでプレー

 女子硬式野球部を持つ大学はそう多くはない。福知山成美高卒業にあたって阿部が選んだ道は、日体大で勉強しながら、女子硬式クラブチームのハナマウイでプレーすること。平日は日体大の2軍の選手と一緒にウエートトレーニングや打撃練習など行い、週末はクラブチームの練習に参加する。「男子のスイングから学ぶところがありますし、体づくりにも力を入れています」とレベルの高い男子と一緒に練習することで、成長を実感している。

 元々、守備と走塁には定評があった。この1年、打撃に重きを置いて練習してきた成果が表れ始めている。6月末に行われた女子代表の新潟合宿では、実戦5試合に出場して12打数6安打5打点。バントも得意としており、1番、6番、9番と様々な打順で存在感を発揮した。

 今月上旬に松山で行われた全日本女子硬式野球選手権大会ではチームの初優勝に貢献した。心身ともに充実して迎える初のワールドカップ。「自分の役割を果たして6連覇という思いが強いです」。その屈託のない笑顔の中に、負けん気の強さがのぞいた。

◆阿部希(あべ・のぞみ)1999年5月9日生まれ。宮城県仙台市出身。兄の影響で8歳から野球を始めた。小松島小ベースボールクラブ時代の11年には楽天イーグルスジュニアに選ばれた。仙台台原中卒業後、福知山成美高で硬式野球を始め、高校生で編成された昨年9月の第1回BFA女子野球アジアカップで日本代表入り。今春に日体大に進学すると同時に、クラブリームのハナマウイに所属し、今月行われた全日本女子硬式野球選手権大会ではチームの初優勝に貢献した。157センチ。右投げ右打ち。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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