「J1自動昇格を掴めるか!片野坂体制3年目の大分トリニータがいいぞ」

例年通り混戦となっているJ2で、開幕から安定して上位をキープするチームがある。大分トリニータだ。

J3から昇格した昨季に9位でフィニッシュし、片野坂知宏監督が3年目を迎えた今季は、攻守に連動したサッカーを披露し、10節終了後に首位に立つ。

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一時は調子を落とした時期があったものの、立て直しの気配を見せ、J1昇格へ向け邁進している。

今回の当コラムでは、成熟度の高さを随所で見せる“片野坂トリニータ”にフォーカスを当て、強さの秘訣と昇格のカギに迫っていきたい。

ここ4試合は新機軸が機能

片野坂トリニータ”

今季の大分は3-4-2-1を基本システムとしてきた。攻撃時には4-1-5、守備時には5-4-1になる“ミシャ・スタイル”が採用され、ポゼッションを重要視するのがベースとなっている。

ただ研究が進み、序盤戦ほどパスワークで相手を翻弄できなくなったチームは、21節の徳島戦から1分4敗と調子を落としてしまった。

ここで、戦術家である片野坂監督が動く。

もともと戦況によって4バックを用いるなど柔軟性に富む指揮官は、26節の岐阜戦からアンカーを置いた3-5-2を本格採用(上図)。

攻守のバランスに優れる新機軸が機能し、導入後の4試合で(3勝1分)と好調をキープしている。

チームを支えるキーマンたち

採用される布陣は時々で変わっても、チームとしての方向性が統一されているのが片野坂体制のトリニータだ。それ故、「誰が出ても機能する」というのが特徴であるが、“背骨”として重要な役割を果たす選手たちがいる。

まずは、リベロの鈴木義宜だ。

主に3バックの右ストッパーを務めていた昨季とは異なり、今季は中央で最終ラインを統率。ゲームキャプテンとして腕章を巻く機会も増えた。

対人プレーの強さに磨きがかかり、鋭い縦パスで攻撃面でも存在感を発揮。フィールドプレーヤーでは唯一リーグ戦全試合出場を記録しており、文字通り不可欠な選手である。

その鈴木とともに全試合フル出場中の守護神・高木駿は、東京ヴェルディに移籍した上福元直人の穴をしっかりと埋めた。

堅実なセービングや果敢な飛び出しはもちろん、ビルドアップでは正確なパスで後方からの組み立てで貢献。ハイプレスに遭ってもチャレンジする姿勢にはロマンを感じる。

そして、アンカーの丸谷拓也も奮闘を見せている。

5年ぶりに復帰した今季は、開幕から不動のボランチとして君臨。

片野坂監督とはサンフレッチェ広島時代にコーチと選手として戦った間柄であり、指揮官の戦術を体現するバランサーとして攻守をつなぐ。右ストッパーも難なくこなすなど、戦術理解度の高さは傑出している。

また、右ウイングバックの松本怜はドリブルでの仕掛けで崩しの軸を担う。

ピッチを広く使う“片野坂スタイル”では、ウイングバックが高い位置を取り、幅を作ることが求められる。

両サイドに対応する背番号7は、持ち前のスピードを活かしてサイドを疾走。幅を生むと同時に、今季はゴールに直結する仕事が増えている。

自動昇格を果たすには…

29節を終えてJ1参入プレーオフ圏内の3位につけており、首位・松本山雅との勝点差は5、2位・町田ゼルビアとの勝点差は2だ。

2位以内に入れば文句なしで昇格できるが、3位から6位でフィニッシュした場合はJ1参入プレーオフに回る。当然ながら、自動昇格ができる2位以内を目指して、残りの13試合を戦っていくことになるだろう。

では自動昇格へ向け、何が必要となるのか。シーズンの疲労が溜まり、総力戦となる終盤戦では、調子の良い選手が局面ごとに活躍できるかが大事となる。

この点に関して、片野坂監督の舵取りに全く問題はない。

例えば今季の采配を振り返ると、國分伸太郎や那須川将大、前田凌佑、岩田智輝といった出場機会に恵まれなかった選手たちが徐々に出番を掴んでいる。特に那須川、前田、岩田の3人は定位置を確保しそうな勢いだ。

さらに、ポジション争いが熾烈な前線は指揮官にとっても“嬉しい誤算”だろう。

直近4試合で4得点の三平和司が好調を維持し、10ゴールで現在チーム内得点王の後藤優介、シャドーを主戦場に9ゴールを奪っている馬場賢治、新天地に適応してきた藤本憲明らが顔を揃える。

他にも伊佐耕平、林容平、清本拓己が控えており、選手層に憂いはない。状況によって最適な組み合わせで戦うこともでき、ライバルより優位に立っている点だと言える。

最終盤で多士済々の攻撃陣がチームを牽引できれば、自動昇格はもちろん、逆転でのJ2制覇への期待も大いに膨らむはずだ。

2018/08/19 written by ロッシ

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