<大ヒット盤> 浜田麻里『Gracia』 超絶な歌唱と強烈な演奏のせめぎ合い

浜田麻里『Gracia』

 約28年ぶりのビクター復帰作。当時から、ハードロックをポップス化した第一人者だったが、本作ではいっそう進化が見られる。

 まず、1曲目『Black Rain』冒頭から浜田ならではのハイトーンで脳天を突かれる。その後、4曲目まで休む間もなく、国内外の実力派プレイヤー達が強烈な演奏をぶちかまし、浜田も、更なるロングトーンや超絶ビブラートで応戦。特に、4曲目『Zero』は、アニメ『進撃の巨人』風の凄絶なドラマ仕立ての曲想で、これに合わせて浜田が絶唱するので、エンディングで拍手喝采したくなるほど。

 一方、5曲目から9曲目あたりは、ミディアム調やスローバラードが多く、往年のロックファンでも安心して聴ける。その分、日々を闘いながら生きていくという浜田自身による歌詞が、より胸に刺さり、50代半ばでも人間ばなれした歌唱を追求するのは、こうしたストイックな思想も影響している気がした。

 ボーナス・ディスク収録の『Seventh Sense』は、ハードロックの荒波の中で、精神世界をさまよう様子を歌った意欲作。本アルバムを聴けば、年齢のせいにする前に、再度チャレンジしたくなるはず。

(ビクター・2CD+DVD 初回限定盤4200円+税)=臼井孝

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