自殺したパートナーが「哀れみ」から支払った 男優暴行疑惑「#MeToo」立役者

By 太田清

女優アーシア・アルジェントさん=2013年5月、フランス・カンヌ(AP=共同)

 性暴力を被害者らが告発する「#MeToo(「私も」の意)」運動の立役者となったイタリア人女優アーシア・アルジェントさん(42)は22日までに声明を発表し、米メディアが報じた年下の男性俳優ジミー・ベネットさん(22)への性的暴行を否定し、支払ったとされる38万ドル(約4200万円)の和解金は、当時パートナーだった著名料理家がこれ以上のトラブルを避け、経済的に困ったベネットさんを救済するため「哀れみをもって」支払ったものだと主張した。 英紙ガーディアン(電子版)などが伝えた。

 著名料理家は作家でもあったアンソニー・ボーデイン氏(61)だが、今年6月、滞在中のフランスで自殺。主張の真偽を確かめることは困難とみられる。ロサンゼルスの警察当局は、未成年との性的関係を強要した疑いで捜査を開始するとした上で、近くベネットさんから事情を聴く意向を示している。 

 アルジェントさんの声明は「完全に誤ったニュースを読み、本当にショックを受け傷ついています。ベネットとはどのような性的関係も持ったことはありません。彼との関係は友人としてのものだけです」と主張。その上で、「当時、深刻な経済問題を抱えており、以前に自らの家族に数百万ドルを要求する法的措置をとったこともある」ベネットさんが「思いもかけない法外な金銭的要求をしてきた」と指摘。 

 これに対し、「巨額の富を持ち、愛される公人としての評判を持つ」ボーデイン氏が、ベネットさんのような危険な人物がもたらしうる、アルジェントさんの評判を落とす暴露を恐れ、要求通り金銭を支払うことを提案したという。 

 声明は「われわれは哀れみをもってベネットの要求に応じることを決め、我々の人生にこれ以上立ち入らないことを条件に、アンソニーが個人的に支援した」としている。 

 性的暴行疑惑は20日付のニューヨーク・タイムズ紙が伝えたもので、ベネットさんが17歳だった2013年、西部カリフォルニア州のホテルで、アルジェントさんから酒を飲まされた上で性的暴行を受けたとして、17年11月に告訴する意思をアルジェントさん側に伝えた。

 アルジェントさんはその約1カ月前、ハリウッド映画界の大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン被告(強姦(ごうかん)罪などで起訴)から受けた性的暴行を告白し、#MeToo運動の中心人物となっていた。ベネットさんは「アルジェントさんが被害者ぶっているのが耐えられず、ホテルでの記憶がよみがえった」としている。アルジェントさんとベネットさんは04年の映画「サラ、いつわりの祈り」で共演、アルジェントさんは共同脚本、監督も務めた。 (共同通信=太田清)

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