日綜産業と米ブランド・セーフウェイ社、仮設足場や安全技術など連携強化

 軽仮設機材メーカー日綜産業(本社・東京都中央区、社長・小野大氏)は、仮設工事世界最大手のブランド・セーフウェイ社(以下・BS社、本社・米ジョージア州、ビル・ヘイズ社長兼CEO)と先行床施工式フロア型システム吊り足場「クイックデッキ」で提携関係にある。両社は今後、製品技術や安全管理面などでさらなる連携を強化し、日本以外のアジア市場でもクイックデッキをはじめとした仮設機材製品・サービス拡販を目指している。(後藤 隆博)

 BS社は昨年、仮設機材メーカー最大手セーフウェイ(SAFWAY)社と仮設工事会社大手ブランド(BRAND)社が合併して設立。メインの足場資機材の提供サービスのほか、工事請負、設計、現場管理、安全対策・トレーニング(訓練)なども手掛ける。石油・天然ガスプラント分野に強く、年間売上高は50億ドル(約5500億円)。世界30カ国に350拠点を持つ世界最大手の仮設メーカー・レンタル業者だ。

 先行床施工式フロア型システム吊り足場「クイックデッキ」は、2004年に当時のセーフウェイ社が安全な橋梁補修用吊り足場のニーズから開発した製品。発売開始後、高所作業での安全性や足場下の交通・作業を阻害しないことなどが評価され、一般建築、会場設備、土木分野など幅広い用途で採用されている。現在までにメイン市場の北米で10万平方メートル、ブラジルと欧州で各2万平方メートル、南アフリカで1万平方メートルの稼働実績を挙げている(推定面積)。

 先月、日綜産業の創立50周年式典が行われたハワイでも、オアフ島セントラル地区のカメハメハ・ハイウェイが通るルーズベルトブリッジ(正式名称・キパパ・ストリーム・ブリッジ、全長約147・5メートル)に約1700平方メートルが敷設。橋の下を通る水道管の更新、欄干や橋桁の部分補修などが行われている。

日綜産業がクイックデッキを日本市場に導入

 日綜産業とBS社のパートナーシップは13年に始まり、14年6月に「クイックデッキ」について、日綜産業が日本と韓国で独占販売を行う総代理店契約と生産移管契約(アンダーライセンス)の業務提携を締結。日本国内のインフラ整備事業で商権拡大を狙う日綜産業と、日本をはじめアジア地域でクイックデッキの拡販を目指すBS社(当時はセーフウェイ社)の営業戦略が一致した。

 地道な販促活動により工場やショッピングセンターの天井、鉄道高架、橋梁の改修工事などで多くの採用実績を挙げ、これまでの推定稼働面積は10万平方メートルに達している。BS社が14年かけて北米でつくった実績を、日綜産業は日本国内においてわずか4年間で達成した形だ。

 日綜産業で生産するクイックデッキは、現場作業員がより安全・安心に作業が行えるようにBS社のオリジナル品に様々な独自技術による改良を加えた日本仕様。ユーザーから高い評価を得ている。

 先月、日綜産業の創立50周年式典出席のためハワイを訪れたBS社のビル社長は、ホノルル市内のホテルで共同記者会見に臨み「日綜産業の高い設計・技術力、品質・安全管理のスキル」を高く評価。クイックデッキについては、アジア市場、日本を含む環太平洋地域を成長エリアと位置付けており「日綜産業とともに、建設工事現場における安全性と作業性の一体ニーズが見込まれる地域を捕捉していきたい」とした。

現場レベルの人的・技術交流も活発に

 「人材や安全面に対する考え方で、日綜産業と我々には共通点が多い」とビル社長。両社はこれまでも、クイックデッキ事業について、互いの現場視察や営業マンの意見交換など、現場レベルの人的・技術交流を活発に行ってきた。今後は、クイックデッキ事業以外での技術・人的交流、製品ライセンス供与などの連携動向が注目される。

 すでにゴンドラ分野においては両社子会社間での提携が進んでおり、日綜産業の同分野での新製品開発などに寄与している。また、日綜産業の法面用昇降設備「法面2号ユニバーサルユニット自在階段」は以前からBS社がかなり興味を持っており、今後米国市場での拡販なども期待されている。

 クイックデッキから始まった日綜産業とBS社との強固なパートナー関係。現場レベルでのさらなる連携で、両社製品群・サービスメニューを生かしたグローバル展開の動向が業界で注目される。

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