【新日鉄住金グループ企業の〝今〟38】〈エヌテック〉鋳物原料、新規商材が両輪 全国の拠点をリフレッシュ

 エヌテックは国内有数の鋳物原料商社。1945年6月、鉄鋼原料統制株式会社の業務代行機関として、銑鉄流通5社の銑鉄部門を統合して関東銑鉄配給株式会社が誕生したのが始まりで、前身の創業は天保時代にさかのぼる。

 現在の『鋳物原料』と『非鉄・建材・機材』を両輪とする事業モデルは10年以上前に確立し、中身をブラッシュアップしてきた。鋳物銑、鋳物用スクラップ、コークスなど主力の『鋳物原料』で顧客サービスの充実を図るとともに、『非鉄・建材・機材』で鋳造機材、OAフロア、集合住宅用ディスポーザ(家庭用生ごみ処理システム)、LEDライトなど新規商材を伸ばし利益率を確保する。佐々木望社長は「お客様が欲しておられることをきめ細かく先取りして、さまざまな商材や情報を提案し、サービスを提供する」と、商社機能の発揮を全社の共通課題として説いている。

 2015年6月に70周年を迎えたのを機に、未来へ向けた変化を加速し始めている。職場環境改善や商社機能強化を狙いにした全国拠点リフレッシュも一つであり、7月の静岡営業所移転で完了した。皮切りとなった関東支店では17年8月にヤード部門の移転を完了し、17年末に新ヤード拠点に事務所を完成。18年4月に営業部門、6月に機材部が新事務所に移転した。旧ヤード跡地は近隣の地権者と共同で再開発事業に活用し、19年9月末の建物完成後は一定の安定収益につなげる。

 集合住宅用ディスポーザではメンテナンス・取り替え需要を捕捉する取り組みを開始している。4月に機材部にCS(カスタマーサービス)事業グループを新設し、専門技術を習得した社員2人体制でスタートした。従来の新規需要に加えて今後は一定の取り替え需要が続く見通しでビジネスモデルを検証しながらノウハウを蓄積していく。

 鋳物銑販売量では18~20年度の中期経営計画で10%拡大を狙う。鋳物銑の使用比率は鋳物原料の1割程度だが、鋳物製品の品質安定化、鋳造歩留まりの向上、溶解電力量の抑制、加炭材の低減など多様な効果がある。ハイテンなど高級鋼化で鉄スクラップの高マンガン化が進むなか、マンガン希釈の役割も重視されている。中国の電炉拡大などで構造的に鉄スクラップ価格が一定水準以上で推移する見通しも織り込み、10%拡大を目指す。

 女性の活用拡大にも意欲的に取り組み始めている。営業総括部に同社初の女性スタッフ職(課長代理)が誕生したのに続き、7月に本社、関東支店で女性社員の配置転換をほぼ一斉に行った。慣例では原則として女性社員の配置転換はしてこなかったが、BCP(事業継続計画)の一環として2ポジション化(=多能工化)を進める。

 仕事の仕方の改革では、今年度は『手書きレス・ペーパーレス・キャッシュレス』を3本柱に据えている。ほぼ3年がかりで細かい改善事例が積み上がってきたため、全社共通で帳票類を統一するなど改善活動の定着と深化を図る。女性社員の配置転換は全社の意識改革に小さくない好影響を及ぼしそうだ。

企業概要

 ▽本社=東京都中央区

 ▽資本金=7千万円(新日鉄住金22・5%)

 ▽社長=佐々木望氏

 ▽売上高70億円(18年3月期単独)

 ▽主力事業=鋳物銑、鋳物用スクラップ、コークス、鋳造用設備、電気亜鉛、建築内装材、防潮板、集合住宅用ディスポーザ、LEDライト

 ▽従業員=42人(18年4月1日)

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