慢性便秘に日本初の診療ガイドライン ポイントを聞く

 悩む人は多いものの、病気として扱われにくい慢性便秘。患者の多くは市販の下剤で対処するなど、満足な治療効果を得られていないのが現状です。明確な指針がなかったことも一因でしたが、昨年秋、日本初の診療ガイドラインが作られました。尾田胃腸内科・内科(熊本市中央区南熊本)の尾田恭院長に聞きました。(高本文明)

-便秘は若い女性に多いイメージがあります。

 「確かにそうです。しかし、高齢になると急増し、男女差がなくなります。高齢社会を迎え、70歳以上の1割が便秘症を自覚しており、消化器科の外来の5人に1人は、便秘関連の患者さんです。多くは大腸がんが心配な方ですが、50歳代から便秘薬を使用し、次第に量が増え、最近は効果がなくなってきたという患者さんが増えている印象があります」

-日本消化器病学会関連研究会が2017年10月、国内で初めて慢性便秘症診療ガイドラインを作成、公表しました。便秘は、どのような状態を指しますか。

 「排便の習慣には個人差が大きく、これまで統一された便秘の定義はありませんでした。ガイドラインでは、便秘は『本来体外に排出すべき糞便[ふんべん]を十分量かつ快適に排出できない状態』と定義されました」

 「慢性便秘症は機能性便秘症と器質性便秘症に分類しています。機能性便秘症は、腸の働きの不調、すなわち腸が動かない、けいれん、おしりの近くに便がたまっても便意を感じないというタイプです。機能性便秘症は、排便の回数や量が少ないため、便が腸内に滞る『排便回数減少型』と、排便の量や回数は問題ないものの、便が快適に排出できず残便感がある『排便困難型』に分けられます。便秘は、回数だけでは判断できないわけです」

 「器質性便秘症は、大腸がんなどで大腸が狭くなり、便が出にくくなるものです」

-便秘がもたらす健康上のリスクは。

 「腹部の膨満感や不快感などによって、身体的、精神的に生活の質(QOL)が落ちてしまいます。さらに、直接の因果関係は定かでありませんが、便秘が強いほど、脳卒中、心筋梗塞が増え、死亡率が高くなる傾向があります。排便時にいきむことで血圧が急激に上昇するためという推測があります」

-ガイドラインのポイントは。

 「まず大腸がんによって腸が狭くなって起こる便秘、器質性便秘症を除外して考える必要があることを指摘しています。次に依存性のない、いわゆる癖になりにくい便秘薬の使用を促進すること。そして市販薬をはじめ、日本で最も使用されている刺激性便秘薬の使用を適正化することです」

-依存性のある眠剤の適正使用を巡る話と似ていますね。

 「そうです。安価で速効性のある、いわゆる『刺激性下剤』を何年も使うと、5年単位で次第に効果が低下し、3倍量を飲むようになっても効果が不十分になったという方が増えています。こうした現状への対策が必要とされているのです」

-器質性便秘症は大腸がんの可能性があるわけですね。

 「例えば、数カ月前後で便が細くなった、腹部が張るようになったといった閉塞[へいそく]症状がある場合や、排便回数が増えたなどの排便習慣の変化、貧血、血便、体重減少が伴うなどは要注意です。さらに、50歳以上で大腸内視鏡検査の経験がなく、こうした症状のある方は、一度検査をお勧めします」

 「近年、新しい治療薬が続々と登場し、科学的根拠、エビデンスに基づいた治療の必要性が高まっています。次回は、慢性便秘症の治療薬を中心に紹介しましょう」

(2018年8月22日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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