80歳のケアマネ

 高齢者福祉施設の80歳といえば、介護を受ける側を想像するのが普通だろう。だが、介護をする側の80歳がいるという。どんな方だろうかとお会いしてきた▲長崎市の認知症高齢者グループホームで働くケアマネジャーの角田寿さん。日焼けした肌に、しっかりした足腰。60代後半に見える▲定年退職後、施設当直のパートを頼まれ、入所者と触れ合ううちに本腰を入れて働こうと決意した。66歳で介護福祉士、69歳でケアマネの資格を取得。現在は正職員として月6回の夜勤もこなす▲世話をする相手は70~90代。年下も介護する。「昔はイモばかり食べていたとか、終戦の時はどうだったとか、相手の話がよく分かる」。同世代ならではの会話力が強み▲この施設では職員8人のうち5人が65歳以上。職員と一緒に入所者が昼食の後片付けをする場面もある。年の近い高齢者同士が、介護する側とされる側に分かれつつ、できることで助け合いながら共生しているようにも見えた▲多くの福祉施設が若い働き手の不足に直面している。高齢者に働いてもらいながら運営を維持する「老老介護」の施設もあるだろう。そんな現実の中で、「必要とされる限り働きたい」という角田さんのような高齢者が、無理なく生き生き働ける環境が保たれるよう願わずにはいられない。(泉)

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