「ACP」に関心を 人生最終段階の治療 語り合おう  在宅医療の医師ら寸劇 25日、長崎ブリックホール 

 人生の最終段階の治療などについて患者と家族、医師らが繰り返し対話し方向付けしておく「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)。この周知を図ろうと、長崎市と近郊の開業医らでつくるNPO法人「長崎在宅Dr.ネット」(藤井卓理事長)は、ACPがテーマの寸劇を25日に同市内で上演する。在宅医療に携わる医師や看護師、介護士、管理栄養士らで結成した「劇団そいでよかさ」が、5月から練習を重ねてきた。
 同ネットが毎年開催している市民公開講座の一環。寸劇形式は初の試み。
 ACPで対話するテーマは、例として▽終末期をどんなふうに過ごしたいか▽危篤のとき延命治療を受けたいか、どんなケアを望むか▽最期を迎えたい場所▽意思を伝えられなくなったとき代理をお願いしたい人は誰か-など。本人の趣味、気持ちが良いと感じる空間などを確認しておくことも大事だという。
 同ネット副理事長で医師の白髭豊さん(56)は「ACPは、あまり知られていないが、元気なうちにどんな最期を迎えたいか決めておくことは大切。高齢になり、認知症などで自分の思いを伝えられなくなることもあるから」と強調する。
 終末期医療に関する国の意識調査(2017年度、973人が回答)によると、ACPの認知度は「知らない」が75・5%。死が近い場合に受けたい医療や療養について家族や医療関係者と「詳しく話し合っている」はわずか2・7%。「話し合ったことはない」理由の56%が「きっかけがなかったから」。
 劇のタイトルは「ころばぬ先の杖(つえ)」。20日夜、同市内の病院の一室では劇団メンバーが練習に励んでいた。劇は、女性が新聞のお悔やみ欄を見ながら「みんな、どんな最期を迎えたとかな」と考えるシーンから始まり、ACPが行われなかった例と行われた例について物語は進む。ユーモアを交え、患者と家族、医療関係者らのやりとりを中心にした内容。劇を一つの「きっかけ」にして自分の終末期について考え、大切な人と思いを共有してほしい-。そんな願いを込めている。
 脚本を手掛けた医師の中尾勘一郎さん(54)は「手術後や退院時、または正月など家族が集まるときに語り合えば家族力も深まる」、プロデューサーで医師の土屋知洋さん(55)は「日本では死ぬときのことを話すと『縁起でもない』と言われがちだが、いざというときに自分らしい最期を迎えられるよう、準備をサポートしたい」と話す。
 寸劇を含む公開講座は25日午後3時から、同市茂里町の長崎ブリックホール。無料。定員300人。問い合わせは同ネット事務局(電095・811・5120)。

患者、家族、医療関係者で話し合うシーンを練習する「劇団そいでよかさ」のメンバー=長崎市幸町、山根内科胃腸科医院

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