【国内建材市場、下期動向を探る】〈(4)地方の展望〉中国地方豪雨復旧、鋼材発注は年明けか 中部、需要の潮目変化も大型物流物件など期待

北海道

 北海道地区は農業や観光・インバウンド(訪日外国人)関連、札幌市をはじめとした再開発案件の継続で、非住宅建築が引き続き好調だ。裏付けるように鉄連まとめの地域別普通鋼鋼材受注量も、北海道は4~6月合計で前年同期比7・1%増の30万4千トンと全国一の伸び率を記録した。

 一方、高稼働の鉄骨ファブリケーターは新規受注や製作工程の調整に苦慮。図面遅れや鋼材・ボルトの納期遅れもあり、加工や製造面の許容能力がネックとなって流通の出荷にブレーキをかける懸念も出ている。

東北

 東北地区の建材需要は、土木向けは公共事業の予算緊縮化や工事発注の平準化で盛り上がりに欠ける。津波被災地の震災復興関連は総じてピークを越え、福島などの未着工地区など局地的な動きに移っている。

 建築向けは、首都圏および東芝メモリ北上新工場をはじめ地区内設備投資関連の建築需要を受けて、鉄骨ファブなどに寄せる加工需要は旺盛。在庫特約店では加工を絡めた出荷が堅調で、一次加工の受注強化、即納化に向けた動きが進行する。下期は建築向け中心の動きとなりそうだが、物件の期ずれや偏在化に伴って、地域や商流により活況感の差が出てきそうだ。

信越

 信越地区は鉄筋需要が昨年度と比較し、復調が見られる。庁舎や体育施設、消防署などの公共案件、市街地のマンション需要に加えて民間の設備投資案件が下支えしている格好だ。

 新潟県内の公共案件では柏崎市役所新庁舎(RC造一部SRC造、S造で4階建て延べ床面積は約1万平方メートル)が2020年度の完成を目指している。長岡市中之島新ごみ処理施設(仮称)整備事業は19年度から22年度にかけて設計・建設を行う。三条市のスポーツ・文化・交流複合施設は19年12月の供用開始を目指す。

北陸

 新幹線延伸工事が進む北陸地区では、観光客の増加に対応する建設投資が継続している。金沢駅西口の外資系ホテル(鉄骨重量5千トン)をはじめ、駅周辺や市中心部ではいまだホテル案件が活発。銀行本店の建て替えや製造業関連の工場、倉庫など地場需要にも底堅さが出てきた。

 このため北陸3県のファブは域内外の受注で山積みが高く、大手は来年春先から夏まで満杯の状態。Mグレード以下でもおおむね年内は確保し、来春の商談も始まっている。新規案件では空いているファブを見つけるのが難しい状況だ。

中部

 中部地区では、上期は前年度下期の反動で建材需要が「期待ほど伸びなかった」(特約筋)が、下期以降は需要の潮目が変わりそうだ。ネットショップの配送サービス向上の一環などで、大型物流拠点の新設が継続的にありそう。自動車関連メーカーの電気自動車(EV)関連の設備投資計画も出てきた。

 ファブ筋からは「フル稼働が続く中、新たな案件の引き合いが寄せられている。今後の営業活動に影響しないよう受注したいが、納期面の問題もある。どう対応すべきかの判断に迫られている」との声も上がる。鋼材使用量万トン級ともいわれるJR豊橋駅前(愛知県豊橋市)の再開発もいよいよ今秋着工する。

関西

 関西地区の上期建材需要はおおむね前年同期比5~10%増となったが、下期も同様の増加傾向が続きそうだ。

 鉄骨は、関東のような1万トンを超える大型物件は数えるほどしかないが、中小物件が底堅い。ここ最近では、1千トンまでの食品スーパーの案件が多い。ただ大径のBCRコラムや高力ボルト、切板の納期が長期化しており、工事の進ちょくに影響を与える懸念がある。土木については、上期は好調だったが「出件の平準化で、下期は盛り上がらないのでは」との指摘もある。

中国

 西日本豪雨災害に伴い、中国地区では土砂災害や家屋への浸水が発生。全半壊した住宅は3千棟超、死者は200人を超えた。交通網の寸断で陸の孤島と化し、断水の影響が市民生活を著しく損ねた広島県呉市や、河川が決壊した岡山県倉敷市真備地区は甚大な被害を受けた。

 緊急性が高い堤防工事などには鋼材仮設材が対応。岡山県や広島県は生活再建やインフラ復旧、二次災害防止向け砂防・治山ダム建設などに補正予算案を組んでいる。足元は災害調査中で、復旧・復興向けの鋼材発注は早くても年明け以降となる見通しだ。

 下期以降は、薬品関係、半導体関連企業の大型工場新設や物流倉庫などの大型案件の出件が控える。JR広島駅周辺はマンションや商業施設といった再開発が進み、次に高層オフィスビル需要が見込まれている。

九州

 九州経済の集積が進む福岡市の中心部で『天神ビッグバン』と銘打った、再開発プロジェクトがいよいよ始動する。24年までに30棟の民間ビル建替えを誘導し、新たな空間と雇用を創出する計画だ。

 目玉となるプロジェクトの概要が明らかになった。天神を代表する福岡ビル、天神コア、天神ビブレが地上19階(高さ約96メートル)、地下4階の複合ビルに建て替わる。事業費は400億円超で、24年春に第1期分が開業を予定する。(おわり)

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