ナイジェリア:北東部バマで避難民の健康被害が深刻化——幼い子どもの死亡増加

専門学校のキャンプに暮らす幼児。3ヵ月もの間、仮設住宅や十分な食料が無い状態が続いている(2018年8月15日撮影)

専門学校のキャンプに暮らす幼児。3ヵ月もの間、仮設住宅や十分な食料が無い状態が続いている(2018年8月15日撮影)

ナイジェリア北東部ボルノ州の町バマでは、政府軍と武装勢力の争いから逃げてきた国内避難民が連日増え続けている。避難民キャンプの受け入れ体制や医療を含めた援助は不足し、幼い子どもを中心に大きな健康被害が出ている。国境なき医師団(MSF)は危機的な人道状況を受け、8月16日に栄養治療と小児医療の緊急プロジェクトを開始。政府当局や国際援助機関に、早急に適切な援助を提供し事態の悪化を防ぐよう呼びかけている。 

幼児33人の死亡を確認

2018年4月以降、1万人を超える人びとがバマの専門学校に置かれたキャンプに到着した。もともとの住まいを追われた人びとや、ナイジェリア政府軍による武装勢力の掃討作戦を避けて来た人びとだ。大勢の人が健康被害を訴えているが、キャンプでは仮設住居と医療援助が人びとの増加ペースに追いついていない。キャンプは2万5000人の受け入れを想定していたが、7月末には上限に達していた。

現地のMSFチームは、8月2日から15日の間に、このキャンプで33人の幼児の死亡を確認した。キャンプには5歳未満児が約6000人いると推定され、状況が危機的であることを示している。多くの子どもは重度栄養失調状態にある上に合併症を患っており、集中治療ときめ細かな経過観察を必要としている。特に現在は雨期で、マラリアと下痢を伴う病気が増えている。

MSFのナイジェリアにおける活動責任者を務めるカーチャ・ローレンツは、「6000人を超える人びとが、暑さや雨、蚊から身を守るすべもなく野外で寝泊りしています。調理器具もなく、配給された乾燥食品の調理もできず、水も不足しています。大勢の子どもは、キャンプ到着時すでに危ない状況にあり、このまま援助と医療が不足すれば、子どもたちの環境はさらに悪くなります」と話す。 

キャンプに新たに到着した国内避難民の子どもたち。多くが年下の弟や妹の面倒も見ている(2018年8月15日撮影)

キャンプに新たに到着した国内避難民の子どもたち。多くが年下の弟や妹の面倒も見ている(2018年8月15日撮影)

栄養治療と小児医療の緊急プロジェクトを開始

現在、バマで唯一の病院である総合病院は稼働しておらず、重病の子どもは70kmほど離れた州都マイドゥグリまで行く必要がある。しかし交通費を負担できない人は多く、たとえ負担できたとしても栄養治療を受けられる入院施設は超満員だ。MSFは8月1日から12日の間に26人の患者をマイドゥグリにあるMSFの小児病院に搬送しなければならなかった。

これと並行するように、MSFはバマで入院施設の設置を進め、8月16日には5歳未満の重度栄養失調児向けに入院診療を開始した。また重症マラリアなどの病気になった15歳未満の患者を対象にした小児医療も開始した。どちらもベッド数30床の施設に整備されたものだ。

しかしこれらも短期的な対応にすぎず、MSFは当局に対し、事態がさらに悪化する前に、援助の大幅拡充に取り組むよう呼びかけている。

ローレンツは、「バマには政府機関や国際人道援助団体がいるにも関わらず、健康と栄養状態に関しては危機的な状況になるまで対策がなされていませんでした。キャンプの過密状態を解消し、人としての尊厳が保てるよう、生活環境の底上げを図る措置と、避難者と地元住民を対象とした、2次医療と救急医療拡充が早急に必要です」と訴えている。

MSFはボルノ州で2014年5月から活動。マイドゥグリ、プルカ、グウォザ、ランなどで避難民と地元住民を対象に、医療・人道援助を提供している。バマでは2016年にも深刻な人道状況について警鐘を鳴らし、緊急援助活動を開始していた。

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