日本の金属芸術家・タケミティカ氏、伊ダニエリのモニュメントをデザイン 「誕生」や「国際性」表現

 イタリアの製鉄プラント会社、ダニエリのブットリオ本社に、独特の形状と光沢で目を引くモニュメントがある。日本の金属芸術家・タケミティカ(加賀武見)氏がデザインした作品で、同社の研究開発センター入口に置かれエンジニアや来客を迎えている。

 モニュメントは、ダニエリのジャンピエトロ・ベネデッティ会長が「アイデアの誕生」をテーマに依頼されたもの。金属アートを手掛けるタケミティカ氏の作品に関心を持ったアントネロ・モルデグリア日本法人代表から促され、2014年の年末にイタリアで行われた会長御前のプレゼンテーションを経て採用された。

 鮮やかな金属の光沢を放つモニュメントは20トンのステンレス鋳物で造られ、15年から約2年をかけて完成した。独特の形をしたアーチは生命が育つ胎内をイメージしている。昨年3月にはモニュメントの落成・披露式がダニエリ私設の小学校開校と併せて行われた。

 芸術の国・イタリアの企業が日本のアーティストへ作品を依頼する、その狙いは何だったのか。タケミティカ氏は「ブットリオはイタリアでも地方の静かな街。そこに拠点を置くグローバル企業のダニエリが国際性や、日本とのつながりを表現したかったようです」と話す。

 タケミティカ氏はイタリアで長く生活・活動した経験を持ち、10年前に帰国して個人事務所「ラ・ガッツァラドーラ」(東京都江東区)を開設。富山県の鋳物メーカー、高田製作所(高岡市)の製品設計など創作活動や日本工学院専門学校デザインカレッジプロダクトデザイン科の専任講師を通じ金属の魅力を発信している。(黒澤 広之)

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