【どうなる?】東京オリンピックで話題のサマータイムって何?

いよいよ開催まで2年を切った、2020年の東京オリンピック。真夏の開催ということで、懸念されるのが開催中の気温の問題です。選手が熱中症などの健康問題にさらされないよう、暑さ対策の必要性に迫られています。打ち水やマラソン・コースの沿道の建物の冷房を開放する「クールシェア」などのアイディアが出される中、「サマータイム導入」という案も聞かれるようになってきました。今回は、このサマータイムに関してお話させてください。

夏時間と冬時間って何?

そもそもサマータイム(夏時間)とは、何なのでしょうか。簡単に言うと、「夏の間に時計を1時間早めて、日の長い時期の日光を存分に活用し電気を節約しよう」という行為です。現在サマータイムを導入しているのは、主に北米大陸の大部分の地域と、欧州連合(EU)の各国。その他にも、南米と豪州の一部でも実施されています。実施時期は場所によって異なるのですが、だいたい3月のどこかの日曜日から10月末や11月上旬にかけてサマータイムになるということになっています。そして時期が過ぎると、時計を1時間遅らせ、冬時間(通常時間)に戻るのです。

日本との時差で見ると、グリニッジ標準時(GMT)のイギリスは、普段は日本と9時間差。日本の午後5時に、イギリスでは朝の8時。けれどサマータイム時期になると時差が8時間になり、同じ日本の午後5時はイギリスの午前9時ということになります。ちょっと不思議な気がしませんか?

サマータイムの歴史

そもそも、サマータイムはいつ頃からできたのでしょう。その歴史は意外と古く、第一次世界大戦中の1916年にイギリスとドイツで初めて導入されました。けれどなかなか定着することなく、第二次世界大戦の最中と終了後に資源節約のために様々な国で再導入されたのだとか。「夏は日照時間が長く、冬は短い」高緯度のヨーロッパ北部などで、日没から就寝までの時間を1時間減少させることにより、照明用の電力消費量を1時間分節約させることが目的でした。

そして意外なことに、かつては日本でもサマータイムが導入されていたことがあるのだとか。第二次世界大戦の敗戦後の1948年から1951年までの3年間、GHQの指導のもとサマータイムを導入していました。

サマータイムのメリットとデメリット

けれど、サマータイム導入にはメリットとデメリットが存在します。

まずメリットとしては、先ほども書いたように「電力エネルギーを節約できる」こと。

ただしこれは前述のように、季節によって日照時間に大きく差が出る高緯度の国に限った話。日本で同じ効果が得られるかというと疑問が残ります。

デメリットとしては、まず第一に、切り替え初期は混乱が生じやすいということ。今でこそスマートフォンなどは自動的に時間を変更してくれますが、それ以外の普通の時計は手動で時間をずらす必要があります。もう10年以上前ですが、筆者はフランス旅行中にサマータイム初日を迎えました。ちょうどその日は(フランスの)国内便に乗る日だったのですが、うっかり1時間早まることを忘れ、慌てた経験があります。(時間を間違えながらも)余裕をもって空港に向かっていたことと、国内のフライトだったことが幸いし、何とか無事に搭乗できましたが。けれどやはり、空港の中で慌てて走っている人を何人も見かけました。

そして第二のデメリットは、健康問題が生じやすいということ。1時間とはいえ、「年に2回時差ボケのような状態を経験することは生物学的リズムに有害であり、長期的な健康問題につながる」という意見も欧州では強くなっています。

確かに欧州在住で毎年サマータイムを経験している筆者も、年2回の切り替え時期は体の不調を覚えます。小学生の子供も、朝起きるのがつらそうな様子を見せます。1時間でこれなのですから、日本で検討されている「2時間早めるサマータイム」は、国民の健康に何らかの影響を与えても不思議ではありませんね。

欧州では、サマータイム廃止の機運が高まる

そういった健康への不安や社会混乱の回避から、EUではサマータイム廃止論も上がってきています。2018年7月上旬から8月中旬にかけて、サマータイムに関する一般人の意見を募る世論調査が実施されました。欧州委員会の発表によると、なんと460万件以上の反応が寄せられたそう。欧州における、サマータイム廃止への関心の高さが伺えます。まだその460万件の意見の内容や、最終的にどういう結論になるのかの判断は発表されていません。けれど日本でもサマータイム導入が取りざたされている昨今、欧州の判断は気になるところではありますね。

TABIZINEも、ぜひ今後の展開に注目していきたいと思います。

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