「天神もなか」の「福榮堂」 100年以上の歴史に幕 3代目90歳店主「やり切った」感謝の笑顔

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3日かけて練られたつぶあんがぎっしり詰まった福榮堂の天神もなか
100年以上続いた和菓子店を閉店した福本リツさん(中央)。手前は名物の天神もなか=熊本市中央区

 熊本市中央区大江本町の電車通り沿いにあり、「天神もなか」が評判だった和菓子店「福榮[ふくえい]堂」が、100年以上の歴史に幕を下ろした。3代目店主の福本リツさん(90)は「お世話になった方々には感謝の言葉しかない」と常連客らの顔を回想している。

 1895(明治28)年、中央区の並木坂付近に創業。約1300平方メートルの敷地に店を構え、約100人を雇っていた。1923年の関東大震災までは東京にようかん工場があり、大手百貨店の三越に出していた。

 戦時中に軍需工場となったのを機に熊本の店が閉鎖され、2代目の父一記さん(故人)が中央区新屋敷に出した支店も熊本大空襲で焼失。51年、一記さんが大江本町に今の店舗兼自宅を構えた。

 「戦争を乗り越えてきた和菓子屋」とリツさん。86年に来熊された今の天皇、皇后両陛下に小豆の入った蒸し菓子「さを鹿[しか]」を献上したことは、福本さんにとって大きな誇りになった。

 皮に「福」の文字をかたどった天神もなかは、3日かけて練ったつぶあんから毎日約100個作ってきた。ぱりっとした皮の食感と、ぎっしり詰まったあんの絶妙な甘さが受けていた。できたての味を知ってほしいと、その場であんを皮に詰めて試食を勧めるのがリツさんの流儀だった。

 職人が高齢化したことなどから、99年に閉店。「もう一度食べたい」という常連客らの声に押されて2015年に復活したが、今回は自身の年齢を考えて閉店を決めた。

 「お盆までは続けたい」と15日の注文まで受け付けた。「やり切ったから、寂しさはない」とリツさん。今後は熊本地震で被災した2階建ての店舗兼住宅を建て直し、趣味として和菓子作りを続けていくという。(木村恭士)

(2018年8月26日付 熊本日日新聞朝刊掲載)