金属行人(8月27日付)

 ハイペースで発生する台風に気を取られていると、朝方の東の空に冬を代表する星座「オリオン座」、夕方には田畑を舞うトンボの姿が見受けられるようになった。いずれもこれといって変哲もない日常のワンシーンかもしれないが、着実に季節が移ろおうとしている一例だろう▼連日猛暑を伝える報道に耳目を傾けていると、ついつい「何年ぶり」や「過去最高」といった言葉と合わせて出てくる気温の絶対値に目を奪われがち。他方、前述の通り、少し外に繰り出すだけで、決して数字には表れない新たな手掛かりがつかめるものだ▼日々紙面を飾る統計の動きもその類いだろう。前年同月や前年に比べ増えた減ったとありながら、対象の製品を売り買いする市場関係者にヒアリングを重ねると、温度差が否めないこともしばしば。定量的に分析できるものばかりではなく、定性的で肌感覚に頼る場面も少なくない▼「暑さ寒さも彼岸まで」との慣用句もどことなく現実味に薄い昨今だが、中長期では一定のサイクルに収まっているのだろう。きょう明日の先行きも読みにくく、何が起きてもおかしくない時代。果たして来月の彼岸のころ、鉄鋼・非鉄金属業界はどのような景色になっているだろうか。

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