トマトの収量と品質アップ 温度や湿度、自動で制御 <スマート農業の今 八代>

©株式会社熊本日日新聞社

ハウス内につり下げられた温度や湿度などを感知するセンサーと岡田誠さん。記録したデータは小屋内にある制御板に送られる
ハウス内の温度や湿度などを小屋の中にある制御板で確認する岡田さん。パソコンには毎日のデータが蓄積されている

 情報通信技術(ICT)やロボットなどを活用した「スマート農業」を実践している施設園芸の現場を訪ねた。日本一の冬トマト生産量を誇る八代地域ではICTを取り入れ、ハウス内の温度や湿度、日照を自動制御。品質や収量の向上、作業効率化につなげている。

 八代市鏡町の70アールでトマトを栽培する岡田誠さん(41)は、29アールの8連棟ハウスで環境制御システムを使っている。ハウス横の小屋にある制御板には、温度や湿度のほか、二酸化炭素(CO2)濃度や日照など、ハウス内外のセンサーで計測したデータがずらりと表示されている。

 ハウス内の暖房やCO2発生装置、保温カーテン、遮光カーテン、換気窓などは全て制御板と連動。自動的にハウス内の環境を整える仕組みだ。

 八代地域の冬トマト作りは、8月下旬の定植に始まり、10月から翌年6月まで収穫が続く。「日射量と気温が下がっていく時期に、いかに効率よく光合成をさせるかが収量と品質向上の鍵になる」と岡田さん。植物は葉の表面の気孔を開閉させてCO2を吸収し、酸素や水蒸気を排出する。適切な呼吸を促すような気温と湿度に設定すれば、トマトの光合成が活発化し、高品質のトマトができるという。

 システムは約200万円。国の交付金を活用して導入し、昨季から本格稼働した。その結果、「トマトの秀・優品率は1割、収量は15%上がった」。ハイイロカビやハカビなどによる病気の発生も大幅に低減。農薬の散布回数が半分に減るなど、効果を実感しているという。

 作業効率も上がった。以前は湿度調整のため、夜中でも換気窓を開閉しにハウスへ出向いていたが、導入後は機器の操作は自動化。スマートフォンでハウス内の温度や湿度が確認できるようになり、「外出先にいても従業員に指示ができるのも利点」という。

 システムで記録したデータと、トマトの生育状態を記した日誌を組み合わせ、最適な生育環境を探る岡田さん。昨季蓄積したデータを基に、今季はさらなる品質と収量アップを目指す。

 同システムは、JAやつしろが埼玉県のメーカーと共同開発。5年ほど前から管内のトマト・ミニトマト農家への普及を始めた。現在、1割に当たる約50軒が導入。さらに、川崎市の別のメーカーが開発した、灌水[かんすい]や肥料投入など地下環境を制御するシステムを導入する農家も出始めた。

 「各農家が持つデータを集めれば、生産の安定や品質向上につながる知見が得られる」と同JA北部総合営農センター指導係の山田将司さん(36)。同JAは八代地域に合った栽培マニュアル作成も進めている。

 山田さんは環境制御システムに、新規就農者をサポートする役割を期待する。施設園芸は初期投資が大きいだけに、失敗が許されない。「システムを使えば、これまで勘や経験に頼っていた部分の多くを、数値で教えられる。失敗のリスクは相当減るはずだ」と普及に力を入れる。(植山茂)

(2018年8月27日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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