「世界の有名観光地に過度な集中」英社が映像で警告

『クラウデッド・アウト―ストーリー・オブ・オーバーツーリズム』 人気観光スポットの実状をはじめ、住人の声や専門家の意見をまとめた【©Responsible Travel】

英国の旅行代理店はこのたび、世界の有名観光地に観光客が集中し、問題化していることを指摘するドキュメンタリービデオを制作・発表した。エアビーアンドビーや格安航空会社の隆盛などで世界の観光客が7年連続で伸び、2016年は12億人を突破したなか(世界観光機関=UNWTO調べ)、有名観光地では社会問題が顕在化している。例えばベネチアでは、ごみ問題や文化遺産の劣化、住環境の悪化などの問題が起きている。(クローディアー真理)

責任ある旅の提案と手配を行う、英国の旅行代理店、レスポンシブル・トラベル(本社・イーストサセックス州)によるビデオが、『クラウデッド・アウト―ストーリー・オブ・オーバーツーリズム』だ。

バルセロナの街角には、「観光客は帰れ」と書かれた看板も【©Responsible Travel】

「オーバーツーリズム」とは、観光地が対応できないほど多く、集中してビジターが訪れ、環境・文化・住環境面で弊害をもたらす事態をいう。

ユーロモニター・インターナショナルによれば、2016年、全観光客の約半数が、旅行者数が多い上位100都市に集中したという。近年、これらの都市への旅行者の増加率は、全観光客の増加率を上回り、今後もこの傾向は続くと予測される。

ベネチアのスカルッツィ橋 昨年末、橋の下にあるカナル・グランデに大型クルーズ船が入ってくることが禁止になった【©Responsible Travel】

ビデオでは、ベネチアやバルセロナの住人が、町が観光客向きに変化し、住みづらくなっていることを指摘する。物価が高騰し、土産物店ばかりが並ぶようになり、好き勝手な行動を取る観光客が、歴史的建築物の劣化を助長。二都市での観光客のお目当ては歴史文化だが、実際、観光客自身がその魅力を損なう原因になっている。

美しい自然が残る東南アジアの島々では、観光客が出した大量のごみが集められた巨大な穴がそこここにあり、プラスチックごみなどによるサンゴ礁の破壊が進む。

昨年、ヨーロッパを中心に、観光客排除を求めるデモが行われた。各国政府も、大型クルーズ船の入港制限、観光客の人数制限、通りを住人用と観光客用に分ける策をはじめ、一時的ながら観光客の立ち入りを一切禁止するなどの措置を取っている。

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