【ロッテ売り子トップ5】スタンドを歩き回ってへなちょこ脱出 感謝と謙虚さで売上げ急上昇のみこさん

人気売り子をご紹介する企画、第5回は謙虚な5位・みこさん【写真:佐藤直子】

今年は売上げ自己新が続出「自分でビックリしちゃって(笑)」

 今季ロッテでは、3月30日のホーム開幕戦からホーム最終戦まで、ZOZOマリンスタジアムでの主催ゲームを対象に「売り子ペナントレース」を開催している。立ち売り販売のドリンクメニュー(ソフトドリンクも含む)を販売する売り子経験5年以内の希望者88人が参加。年間販売杯数ナンバー1となった売り子には「ハワイアン航空 成田-ホノルル往復ペア航空券」がプレゼントされるという企画だ。

 混戦模様のパ・リーグにおいてペナントレースが激化するとともに、「売り子ペナントレース」も佳境に突入。現在はまりなさんが首位を独走する形だが、レース状況が大幅に変わる可能性が残されている。それが8月31日に開催される「チケット・ビール半額デー」だ。通常700円のビールが350円になる他、ビール以外の各種ドリンクも通常よりお得な価格で販売されるため、この日に売上げ自己新記録を達成する売り子も多い。

 そんな一大イベントを前に、7月31日現在「売り子ペナントレース」のトップ5入りする人気売り子をご紹介するこの企画。第5回は「私なんかから買ってくださるお客さんに感謝です……」と、どこまでも謙虚な5位「みこ」さんだ。

 野球好きの父に連れられ、幼い頃から球場に足を運んでいたみこさんは、子供の頃から売り子に憧れを持っていたという。

「父が売り子さんから買ってよく飲んでいたんです(笑)。すごくカワイイ人ばっかりだなって憧れていて。それで、大学進学と同時に千葉に来て、友達とバイトを探していた時に、売り子募集を見つけたんです」

 華やかなイメージとは裏腹に、体力勝負の売り子という職業。「みんな覚えているのに、私は一番最初の日を覚えていないんですよ」というくらい必死に売り歩いたが、なぜか途中で辞めようと思ったことはない。売り子初日だけではなく「1年目の記憶があまりないんです」と苦笑いするが、「最後までいて、とりあえず売ろう」とスタンドを歩き回った。4年目の今では最高で1日246杯を売り上げ、売り子ペナントレースでは5位にランクインするまでに成長した。

「先輩たちが卒業した影響だと思うんですけど、今年に入って今まで出したことのない数字がどんどん出て、自分でビックリしちゃって(笑)。2年目までは全然へなちょこで、3年目にやっと買ってくれる方が増えた感じなんです」

実は井口資仁監督の大ファンでもあるという、みこさん【写真:佐藤直子】

「待っててくれるのが、すごくうれしいんです」

 今年、一気に売上げがアップしたのは、決して偶然ではないだろう。「へなちょこ」を自称するみこさんだが、売上げを伸ばすためにとにかく歩き回ったという。

「いろいろ努力しました。1年目は外野を回ってみて、あまり売れないことが分かった。2年目は4階席まで行って、少しずつ売れ始めた。私はサッポロを売っているんですけど、あまりサッポロがいないところがあったりして。とりあえず他人より歩くことを心掛けています。おかげで脚の筋肉がすごくて、お客さんにも『え、陸上部?』って言われたり(笑)」

 常連が増え、売上げが伸びることはうれしいが、同時に困っていることもあるという。

「常連さんが増えて下さって、すごくありがたいんですけど、逆になかなか皆さんのところに回れなくて申し訳ないです。売れ始めた頃にすごく売れる席の周りしか行かなかったことがあるんです。そうしたら、他の席に座っていたお客さんに『なんで来てくれないの?』って言われちゃって。それを聞いたら『ダメだ、全部回るようにしよう!』って気合が入りました(笑)。どうしても外野までは回りきれないので、内野は全部回るようにしています。

 待っててくれるのが、すごくうれしいんです。1年目、2年目から買ってくれているお客さんは、本当に『ありがとうございます』って拝んじゃうくらいです。私なんかのために……っていう感謝の気持ちが、ずっとあります」

 そんなみこさんがスタンドから4年間応援し続けているのが、井口資仁監督だ。現役時代からその雄姿を目に焼き付けており、根っからの井口ファンだ。

「ホークス時代からめっちゃカッコいいと思っていて、カードも集めていたんです。好きな数字と言えば、当時の背番号の7を選んでいたこともあります。だから、働き始めた時、すごくうれしくて。去年引退した時は寂しすぎて、記念のコラボTシャツを朝から並んで買いに行きました。Tシャツは家に飾ってあります」

 今年で売り子を卒業するが、「寂しいです。最後泣いちゃいます」と困り顔。「心にポッカリ穴が空いちゃう感じで、お客さんや仲間と会えなくなるのが、本当に寂しくて」と話す。だが、最後まで変わらず、感謝の気持ちを伝えるために、スタンド内を歩き続ける。

「4年目だし、たくさん売りたい思いもあるんですけど、お客さんと会える回数が減ってきているので、ちゃんと全部回りたいし。『ペナントレース応援しているよ』って言って下さるお客さんもいて、そのためにももっと売りたいんですけど、皆さんとコミュニケーションも取りたいし。いろいろ葛藤があって複雑ですけど、最後まで頑張ります」(佐藤直子 / Naoko Sato)

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