慢性便秘の治療薬 医師と相談して選ぶ

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 慢性便秘の治療は、薬の内服を中心とした保存的治療が柱となっています。昨年秋に公表された診療ガイドラインでは、新薬をはじめ、長年使われている個々の治療法の推奨度が明示されたのが特徴です。尾田胃腸内科・内科(熊本市中央区南熊本)の尾田恭院長に聞きました。(高本文明)

-ガイドラインは、治療についてどう示していますか。

 「内服療法や生活習慣の改善などの保存的治療を基本としています。質の高いエビデンス(科学的根拠)に基づいているか、強く推奨されるか程度を示しています。内服療法のうちエビデンスの質が高い『A』で、『強い推奨』とされたのは、上皮機能変容薬と浸透圧性下剤です」

-上皮機能変容薬とは。

 「上皮機能変容薬は、小腸内への水分の分泌を促し、便を軟らかくすることで排便を促す新しい機序の治療薬です。ルビプロストン(商品名アミティーザ)があります。妊婦さんには禁忌で、若い女性では吐き気が生じやすいので医師の管理で試す必要があります」

-浸透圧性下剤は何ですか。

 「浸透圧性下剤は、従来使われている酸化マグネシウムなどが成分です。ガイドラインでは、定期的なマグネシウムの測定が推奨されています。腎機能障害者や高齢者では、酸化マグネシウムを内服すると高マグネシウム血症を起こす可能性があるため、服用量について医師の管理が必要です。また胃酸によって活性化するので、逆流性食道炎の内服をしている方は効果が弱まる場合があります」

-新薬では、どんな薬が出ていますか。

 「ここ数年で依存性になりにくい2剤が保険適応になりました。2012年に承認された上皮機能変容薬のルビプロストンは30年ぶりの便秘治療薬です。今年4月に保険適応になった胆汁酸トランスポーター阻害薬のエロビキシバット水和物(商品名グーフィス)も登場しました。さらに、数剤が保険適応の予定があります。ガイドラインでは、これらを利用し、習慣性便秘を回避しようという狙いがあります」

 「新薬は、まだ安価ではなく、値段の面からも浸透圧性下剤の酸化マグネシウムが基本薬となります。しかしながら、安全性から使用量の制限もあり、これのみで便秘を改善できる方は多くありません。自分に合った新薬を医師と相談しながら選ぶことで、長期に安定した便秘の改善が望まれます」

-市販の便秘薬もあります。

 「ガイドラインでは、刺激性便秘薬の使用の適正化も狙っています。市販の便秘薬の大半は刺激性下剤です。非常に強力な薬剤で、習慣性、依存性、長期使用による耐性が生じて難治性便秘になるといった問題があります」

 「アロエ成分の便秘薬も依存性が高いため、米国では市販薬としては販売制限があります。安価で速効性がある一方、数年単位で効果が低下していくため、運動量が極端に低下する超高齢化世代では特に排便に危機感があります」

-内服療法のほかには。

 「骨盤底筋を適切に収縮できるように訓練するバイオフィードバック療法は、排便困難症状が強い人に効果が期待できます。保険適用ではありませんが、エビデンスレベルは『A』です」

-運動や食事の効果は。

 「適正な食事、特に食物繊維や乳製品の摂取と運動、腹壁マッサージなどが便秘を改善するという、たくさんの論文報告がありますが、確固とした医学的根拠はありません」

 「しかし、食物繊維の適正摂取と運動は、腸のぜん動や免疫機能を高めるといわれ、しかも、体に害はなく、多方面の健康全般にも効果があるという論文が数多くありますので、生活の基本としてお勧めします」

(2018年8月29日付 熊本日日新聞朝刊掲載)